うちゅうてきなとりで

the cosmological fort 無職戦闘員による本メモ、創作、外国語の勉強その他

『The Humarn Factor』Graham Greene

 外務省六課のなかからソ連へ情報がリークされた。情報自体はささいなものだが、アメリカに知らされれば協同関係に支障をきたす。重役のデントリーやパーシヴァル、Cらは、第六課のメンバーであるカストルやデイヴィスに容疑をかける。特に、デイヴィスを消さねばならないという議論が進む。

 有色人種と結婚したカストルをはじめ、独身だがカストルの子供には好かれるデイヴィス、友人がおらず、娘の結婚式を怖れるデントリー、釣りが好きだが非情なパーシヴァルなど、個性的な人間が数多く登場する。

 嫌疑をかけられたデイヴィスはなぞの変死をとげるが、ソ連に情報をリークしたスパイはカストルである。

 同僚が濡れ衣によって殺されるのを、カストルは何食わぬ顔でやり過ごす。彼が唯一心を開けるのは真の雇い主であるロシア人のボリスだけである。

 ところが、カストルが最終報告を送ると、ボリスたちは行方をくらましてしまい、さらに最終報告が何者かに差し止められ、外務省へ送り返される。ついにカストルの二重スパイが露呈するときがきたのだ。

 ばれるかばれないかの危ういところで、おもわぬ幸運が訪れる。カストルの様子を見に来たデントリー将軍は、彼の変わらぬ様子を見て、また無実のデイヴィスを殺したパーシヴァル博士への反感から、パーシヴァルにたいして彼は犯人ではないと報告する。

  ***
 カストルソ連側の誘導によって無事モスクワに辿りつくが、そこで待っていたのは妻子のいない、仕事のないむなしい生活だった。カストルの妻サラは自分の不注意から外務省にスパイの一件をばらしてしまい、出国できない状態に陥っていた。黒人の妻子を南アフリカから救い出すために母国を裏切ったが、その後再び離別してしまったのは皮肉だが、裏切り者の宿命としてはまだやさしいほうだろう。

 カストルの母親は息子が「反逆者、国賊、逆賊」になってしまったと嘆く。カストル自身は、わたしの祖国は妻子だ、と言っていたが、その執着によりかれの生活は崩壊する。

 

The Human Factor (Penguin Classics)

The Human Factor (Penguin Classics)