うちゅうてきなとりで

the cosmological fort 無職戦闘員による本メモ、創作、外国語の勉強その他

藪知らず(2011)

指が地面からのびて、岸辺をおおうと森ができた

キチン質の爪から赤や、緑、黄色の 色とりどりの
電波が発射され たてものの壁にぶつかると柱時計に
ぶつかった わたしの弟、柱時計の分電盤がひらく、
黒い歯とくちびる、舌は文様をえがくように
こまかくふるえている これら小さくて
かわいらしい部位がむきだしになる、そのつど
弟は年表を読みあげる
無数の指は空にうかぶ鉱泉をしめした こまかい粒子が
あつまると、反応をおこして石になる、それは肺のすきまに
しきつめられた石つぶてだった 摘出され、
横隊でならんだ肺に花かざりをつける
戦闘服をきた人形、昆虫のたまごでできた人の
かたちが小銃をかまえた
森はひろくて、なにもさえぎるものがない
火薬の音が指の表面に吹きつけると、弟が横だおしに
なる気配がした まだ熱のある、あたたかい
肉が、いま、羽を振動させて搬送波をうみだす
忘れないうちに城まで届いた
弟は壁にうちつけられている、黒い歯ぐきの光沢に
心をひかれて、くずれないようになめる