指が地面からのびて、岸辺をおおうと森ができた
キチン質の爪から赤や、緑、黄色の 色とりどりの
電波が発射され たてものの壁にぶつかると柱時計に
ぶつかった わたしの弟、柱時計の分電盤がひらく、
黒い歯とくちびる、舌は文様をえがくように
こまかくふるえている これら小さくて
かわいらしい部位がむきだしになる、そのつど
弟は年表を読みあげる
無数の指は空にうかぶ鉱泉をしめした こまかい粒子が
あつまると、反応をおこして石になる、それは肺のすきまに
しきつめられた石つぶてだった 摘出され、
横隊でならんだ肺に花かざりをつける
戦闘服をきた人形、昆虫のたまごでできた人の
かたちが小銃をかまえた
森はひろくて、なにもさえぎるものがない
火薬の音が指の表面に吹きつけると、弟が横だおしに
なる気配がした まだ熱のある、あたたかい
肉が、いま、羽を振動させて搬送波をうみだす
忘れないうちに城まで届いた
弟は壁にうちつけられている、黒い歯ぐきの光沢に
心をひかれて、くずれないようになめる