うちゅうてきなとりで

The Cosmological Fort 無職戦闘員による本メモ、創作、外国語の勉強その他

非政治的マスナヴィー

 ◆USSマケインを隠せ

 合衆国国防長官シャナハンは2019年6月11日付で全国防総省職員に向けた覚書を発簡した。

 内容は、軍人、文官を含む全職員に対し、法律及び国防総省指示に従い、軍の非政治性を維持するよう注意喚起したものである。

 

 具体的には、規則に定められている市民としての権利を行使する以外の、特定の候補者、政党等に肩入れするような政治活動をしないこと、組織として政治抗争に加わらないことを呼びかけている。

 

 こうした指示が出された理由は、先月トランプ大統領横須賀基地を訪問したときに発生した「マケイン隠し」事件にある。

 


 故マケイン上院議員は、トランプ大統領と長年ツイッター等で論争(悪口合戦?)を続けてきた。これを受けて、ホワイトハウスの担当者が海軍に対し、横須賀に停泊している「USSマケイン(駆逐艦)」を視界から隠せと命じた、というのがその内容である。

 USSマケインは2017年にタンカーと衝突事故を起こし乗組員10名が死亡、第7艦隊司令官が更迭されている。何かと話題になる船である。

 

 今回、トランプのホワイトハウスが持ち込んだ政治性は何とも幼稚であり、古今東西の独裁者・バカ殿に通じるものがある。

 記事によるとこの指示は担当者の「忖度」ということだが、そうであれば部下を指揮する能力がないだけである。トランプは「かれは善意でやった」と擁護したらしいが。

 

 

 ◆アメリカ軍人・職員の政治参加

 シャナハン国防長官の覚書において参照されている国防総省指示では、職員の政治参加に関する規則を定めている。

https://www.esd.whs.mil/Portals/54/Documents/DD/issuances/dodd/134410p.pdf

 

 軍人に対しては、政治参加という市民としての責務を遂行することが奨励されているが、党派的政治活動(Partisan Political Activity)には関与してはならないとしている。

 

 

 やっていいこと:

 現役軍人は、選挙登録、投票、個人としての政治的意見表明ができる。

 役職や権威を用いない限りで、他人に投票を呼びかけることができる。

 制限を守り、制服を着用しない限りで、政治団体に所属し会合に参加できる。

 国防長官の承認を受け、また本来任務に影響しない限りで、政党に与しない選挙職員として勤務することができる。

 個人として請願に署名することができる。

 個人として、また投票の呼びかけでない限り、自らの政治思想や意見を新聞紙等に表明可能である。意見が現役軍人のものであると明らかな場合、国防総省の総意ではなく個人の見解であることを明記する。

 細則の許す範囲で政治献金が可能である。

 自分の車の「バンパー」に政治ステッカー(MAKE AMERICA GREAT AGAINなど)を貼付できる。

 個人の「聴衆」として献金パーティーや政治集会に参加可能である。

 

 ダメなこと:

 党派的政治活動に参加すること全般が禁止されている。

 職場で党派的政治活動や投票呼びかけを行ってはならない。

 自分の車に巨大な政治ステッカーを貼付してはいけない。

 自分の官舎に党派的ポスターなどを掲示してはいけない。

 

 (略)

 

 

 その他、軍人の公職勤務や立候補に関する規制が書かれている。

 現役軍人がホワイトハウスの補佐官やアシスタントになる例は割と多い。

 

 軍人の政治活動に係る権利をざっと読んでみると、かなり広範な政治活動を許されているように感じる。

 特定の政党を支援することはできないが、私服であれば聴衆として集会にも出られ、またメディアへの意見表明も許されている。

 車のステッカーの細かい規定などはどう判定していくのかが興味深い。

 

 

 ◆夢の中の兵隊

 私は次のような夢を見た。

 わが国の〇〇隊には、建前上、ここまでの自由はない。基本的に〇〇隊の者が許されているのは選挙での投票のみである。

 わたしの脳内経験では、エアガン雑誌に実名で投稿した作業員が隊長に怒られていた。本来、軍に係わる事項のみが事前申請を要すると記憶していたが……。

 論文や文章の投稿自体が異様に厳しくなったのは、航空の某幕僚長が電波論文を書いて以来だと記憶している。

 クビになったこの人物はいまも大人気、多くの幹部が講演会に出向いている。

 

 元来、日本人はアメリカ人ほど政治活動に熱心ではないが、それでも、発言を奪われた作業員たちの政治意識は非常に先鋭である。

 

 外に向かって意見を表明することはできないが、職場では多数が保〇速報やキ〇チ速報、ヤフーニュースを閲覧し、外国人や特定政党の悪口で盛り上がっていた。

 少し前に、野党議員に暴言を吐いた空的幹部が出現しニュースになっていたが(私はこの人物の指示を受けて作業したことがある)、事件を受けてとある将軍は「よくやった」と内輪で発言した。

 

 兵器の整備法を教育する将校が授業で「中国人なんてな、あんなの撃ち殺せばいいんだよ」と言ったのでクラスの皆で笑った。