ハンブルク空襲の最中に、若い軍人に助けられた女の話。語り手は、女から軍人本人または軍人の親類ではないかと勘違いされる。
――大きな激動の時代には、われわれはみんな互いに似通ってくるのだろうか。あるいは、こういう時代には、個々人のもつ考えが壊れた境界線を踏み越えて、共通の場へ出てゆくのだろうか。そしてそこで、遅かれ早かれ、同様にひどい目にあったほかの人から生まれた考えと出会う。こうして共通の運命を体験したことを確認しあう。
アパッショナータ
死神とのインタヴュー
町に潜む死神家族との会話。死神の男は町をうろつき、通りかかった子供を交通事故で死なせてしまう。語り手の作家Nはなんてひどいことをするのか、と思う。
童話の本
海から来た若者
実費請求
クロンツ
滅亡
ハンブルクの空襲を目撃した記録。ノサックの作品のなかでも有名なものらしい。連合軍の空襲によって大量の市民が殺戮され、生活基盤が破壊された。人びとは焼け出され、市内から逃げ出してきたが、やがてまた戻っていく。
実際に見聞した内容に基づいているようだ。
市民のなかで、敵軍に対して恨みを抱くものはほとんど皆無だった。かれらは、何もできない無力な国と政府を恨み、また、国に対して何事かを期待していた自分たちを軽蔑した。
自分たちの生命と生活を破壊された人びとに対して、何か指導的な言葉を投げつけることが果たしてできるだろうか。
オルフェウスと……
***
オデュッセウスや神話を題材にした数編をのぞいて、ほぼすべての話には戦争が関わっている。空襲や戦争のために翻弄された人びとだが、完全に人生をあきらめているわけではない。
- 作者: ノサック,Hans Erich Nossack,神品芳夫
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 1987/02/16
- メディア: 文庫
- クリック: 2回
- この商品を含むブログ (6件) を見る