――傭兵の真のタイプは、あたかも事柄がきちんと整頓されているかのように続いていく腐った理想主義と向き合って立っている。――かれらは昔も今も将来も、あらゆる場所、あらゆる時代にも変わらず、あの生ける屍とは何の関係もないとの感じを与える。危険がますます大きくなっているのに、かれはますます元気で、ますます必要な人間になっていくと感じている。(ユンガー『パリ日記』)
問題的な政府の内部で働いてきた人間に以前から関心があり、かれらが不本意な組織の中で何を考えてきたのかを調べようと思った。
ユンガーはドイツの軍人で、第2次世界大戦中は指導者暗殺計画に関与した疑いで軟禁された。
- 作者: エルンストユンガー,Ernst J¨unger,山本尤
- 出版社/メーカー: 月曜社
- 発売日: 2011/06
- メディア: 単行本
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ゴットフリート・ベンは、閑職に追いやられて大人しく文章を書いていた。
Prose Essays Poems: Gottfried Benn (German Library)
- 作者: Gottfried Benn,Reinhard Paul Becker,Volkmar Sander
- 出版社/メーカー: Continnuum-3pl
- 発売日: 1987/06
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より具体的な行動を起こした人びとについての本。ただし、自分の良心に従ってではなく、だれか別の主人の指令を受けている可能性もあり、結局外部からはわからない。
- 作者: クリヴィツキー,Walter G. Krivitsky,根岸隆夫
- 出版社/メーカー: みすず書房
- 発売日: 1987/03
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Autopsy For An Empire: The Seven Leaders Who Built the Soviet Regime (English Edition)
- 作者: Dmitri Volkogonov
- 出版社/メーカー: Free Press
- 発売日: 2008/06/18
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いま読んでいるのはシュペーアの回想録で、現在つくられたヒトラーの人物像や戦時中の言動のほとんどはこの本が原典ではないだろうか。
しかし、「人知れずヒトラーの暗殺を考えたがやめておいた」、「絶滅収容所については、直接聞く機会がなかった」等のアリバイ工作的な文言もあり、用心深く読まなければならない。
組織の命令でやったことが後で訴追されたという例ではアイヒマンが有名だが、『アイヒマン調書』を読むと、アイヒマン=大人しい公務員という、私の勝手な先入観とは違い、相当の確信をもって業務に取り組んでいたことがうかがえる。おそらく、物の善悪や人命など、クズとしか思っていなかったのではないだろうか。
――特に印象的だったのは、アイヒマンが自分の犯した凄惨な罪に対して明らかに何の感情も持っておらず、まったく悔恨の情を示さないことだった。
- 作者: ヨッヘン・フォンラング,Jochen von Lang,小俣和一郎
- 出版社/メーカー: 岩波書店
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同じくアイヒマン関連図書の古典である「エルサレムのアイヒマン」において、ハンナ・アレントは、どのような主人に雇われるにしろ、役人は必ず責任を負わなければならないと書いている。
――「内的亡命」という言葉はこのときにはジョークとなっていた。弁明者は、かれらは内心では常に反対していた、と告白する。内心が露顕しないように、かれらは必要以上にナチ的でなければならなかったという。
――アインザッツグルッペンの構成員として15万人を殺害した人物は、自分は内心では常に反対していた、と弁解した。
――おそらく、「真のナチス」としてのアリバイをかれに与えるためには、15万人の死が必要だったのだろう。
――アイヒマンは、自分の立場であればドイツ国民すべて同じように行動しただろう、と弁解する。これに対し、判事は以下のように反論する。ドイツ国民誰でもがやっただろうということは言い訳にならない。われわれが判断するのは潜在的にやったかどうかではなく実際に被告がやった行為についでである。アイヒマンの内心や、良心、動機ではなく、アイヒマンが加担した行為が問題である。
――政治は子供の遊びではない。すなわち、政治においては服従することは支持することと同じである。
Eichmann in Jerusalem (Penguin Classics)
- 作者: Hannah Arendt
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芦部信喜『憲法』を読んだときに、「公務員になる権利」も参政権の一種と書かれていた。政治行為を制限される役人であっても、政府の機能の一部として働くということは政治に関与しているということである。
ここで言及した本のメモもデータがたまっているので、順次投稿していきたい。あまり一気にやると更新が滞ってしまうので継続的にやる。