6 アメリカ外交公電が公開され、一般には秘匿されていた各国の政治的方針、取引、また米外務省職員による各国首脳の悪口等が曝露された。
また、ヒラリー・クリントンが国連や経済会議の場で盗聴、身辺調査をするよう指令を出していたことも明らかになった。
合衆国政府は、外国の首脳や国連職員の健康状態、クレジットカード等の個人情報、ログインパスワード等の収集を命じていた。
「アサンジは非合法活動に従事している」と政府は非難していたが、その足場が危うくなった。
オバマ大統領らは、アサンジの活動に対して強権的な措置に踏み切った。各企業に圧力をかけ、ウィキリークスの利用するインフラ環境を停止させた。
このことは、インターネットが自由な空間ではなく、企業や政府の取り決めによって成り立っていることを示している。
その後、協力者や有志の尽力によりアサンジの身柄が米国に引き渡される事態は回避され、またウェブサイトも復活した。
外交公電の曝露は米国政府とその周辺を激怒させた。
合衆国はアサンジとウィキリークスを国家の敵と定めた。
――……米国の保守派は、アサンジをオサマ・ビン・ラディンにたとえ、世界規模での追跡を求めている。……ニュート・ギングリッチは、アサンジを「敵性戦闘員」にランク付けするよう求めた。「情報戦争も戦争だ。ジュリアン・アサンジは戦争を行っているのだ」とさえ言った。
保守派のウェブサイトでは、「CIAがジュリアン・アサンジをもっと早くに殺害しておくべきだった」との書き込みが行われた。
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国家の本質は情報の独占であるとされる。
また、情報の独占、秘密の保持は、強権的な政治には不可欠である。
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ウィキリークスとブロガーの問題について。
――ブロガーの問題は情報源がないということではない、と「クラウドソーシング」に期待していたアサンジは、明らかにがっかりした様子で言った。かれらは単純に、新たな事実を暴露するということには興味がないのだ。ブロガーにとっては、ちょうどそのとき話題となっているテーマについての見解を述べることだけが重要なのである。
――現在のウィキリークスは、伝統的なメディアと、デジタル革命なしではありえなかった、内容の検閲がおこなわれにくいということだけが取り柄のウェブサイトのあいだに位置する、いわばどっちつかずの存在である。
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本書によれば、オバマ大統領はブッシュ以上に情報統制について強硬派であり、内部告発者への措置も過酷である。
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他にもウィキリークス関連本はあるが、内容が似ているようで買う気がおきなかった。ただし、『ウィキリークスの内幕』は、アサンジと袂を分かった同僚が書いたものである。
◆メモと感想
ジュリアン・アサンジは自らの技術を利用し、情報の民主化と報道による監視を実現するためにウィキリークスを創設した。
民主主義国家においては、国民が正確な情報を把握しているということが大前提となる。正しい情報を元に、国民は政治判断を下すことができるからだ。
情報通信技術は権力による抑圧手段ではなく、自由を確保するために用いられなければならないという点に賛同する。
政府や権力を監視する機関は、必ず反撃を受ける。この反撃に耐えるためには経済的、政治的な基盤が必要である。しかし、基盤を確保するために企業や別の権力の庇護を受け、自由が失われる。
永遠の課題は、報道機関に独立性が備わっていないことにある。
ウィキリークス等の新しいメディアについても、活動存続のためには独立性を確保しなければならないのではないか。
アサンジは理想的な報道機関の像を今でも信じている。いわく、大手の報道機関の死者はあまりに少ない。
かれらはジャーナリズムを真面目に考えておらず、ジャーナリストと呼ばれることを恥と考える。危険地域の調査、取材は地元の特派員やフリーの記者に任せている。
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