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『ウィキリークスの内幕』ダニエル・ドムシャイト-ベルグ その1 ――ハッカーたちの内輪もめ

 ウィキリークスは、オーストラリア人ジュリアン・アサンジが創設した、匿名により機密情報を公開するウェブサイトである。

 

 ウィキリークス内部でジュリアン・アサンジとともに働いた著者は、アサンジと不和になりチームを追い出され、この暴露本を書いた。

 

 

 ◆メモ

 ウィキリークス内部分裂の原因は、他の組織にも共通するもので、決して独自のものではない。

 リーダーの人望がなかったり、独善的だったりするとすぐに仲間割れが始まる。

 本書でも、ウィキリークス創設者ジュリアン・アサンジはほぼ人格破綻者として描かれている。喧嘩を深刻化させているのは、チャットでの罵り合いや、同部屋での集団生活、お金の配分をめぐるトラブル、手柄や功績の取り合い等である。

 

 しかし、報道の自由化、情報の自由化が人びとの権利の向上に資するはずという理念は皆同じであり、わたしもこれに同意する。

 また、権力を持つ者の不正に物理的な力以外で対抗できるのは、現在ではコンピュータ技術であると確信している。

 

 一方、合衆国大統領選におけるロシアの介入を調査した『Russian Roulette』によれば、合衆国では、アサンジはロシア情報機関と強いつながりがある人物として扱われている。

 

 

 全体的にみて、西側諸国に関するリークが目立つこと、ロシア側が西側諸国に反論する際、西側諸国による言論弾圧の例としてアサンジを挙げること、大統領選の際民主党側をリーク対象にしたことが理由である。

 こうした情報工作は大国であればどこもやっているので、現時点で判断することはわたしには不可能である。

 


  ***
 1

 著者はドイツ人で、セキュリティ会社の技術者として働いていた。かれは2007年にジュリアン・アサンジと出会ったときの印象を語る。

 アサンジは変人・偏屈で、著者の知人や、ベルリンのハッカーコミュニティ運営者ともめごとをおこしていた。

 かれは何日も服を着替えず、プレスルームで寝泊まりし、入場料の支払いを頑なに拒否した。

 しかし、二人はウィキリークスの理念……情報の自由化に関して意気投合した。

 

 

 2

 スイスのジュリアス・ベア銀行の取引データをアップロードし、銀行や脱税者たちから脅しを受け撃退した経緯について。

 初期はアサンジと著者くらいしかメンバーがおらず、またサーバーも旧式1台だったが、大規模組織とネットワークを装い対抗した。

 著者は、世の中の悪党と戦っているという満足感を得た。

ja.wikipedia.org

 

 

 3

 「信者に荒唐無稽なうそを教え、金を搾取し、脱会者を脅迫する」という危険なカルト宗教サイエントロジー内部告発について。

ja.wikipedia.org

 

 

 4

 情報を公開するにあたりオールド・メディア(雑誌や新聞、テレビ)と接触することがあったが、重要なニュースが必ずしも取り上げられるわけではなかった。

 

 ドイツの情報機関であるBND(ドイツ連邦情報局)は、ウィキリークス宛に機密文書削除のメールを送ってきたことで、その真実性を自ら証明してしまった。

 またBNDはネットサーフィン用のIPアドレスでウィキペディア核兵器、軍用機、BNDのページなどを書き換えていた。

 

 ――さらに面白かったのが、ゲーテ・インスティトゥート(ドイツ文化センター)に関する書き換えだった。以前、この項目の説明文には「世界各地にあるゲーテ・インスティトゥートの多くは、BNDの非公式のコンタクトポイントとしても使われている」という一文があった。これが、「世界各地にあるゲーテ・インスティトゥート支部は、BNDの非公式の駐在所として使われてはいない」という正反対の一文に変えられてしまっていた。

 

ja.wikipedia.org

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 5

 ジュリアン・アサンジ人間性……変人、奇行。

 他人を、自分にとって利益があるかどうかという観点からしか見ない。

 著者を、都合のいい使用人だと考えていたふしがある。

 

 

 6

 寄付金の用途をめぐる対立、助成金応募をめぐるけんかについて。

 

 ――両親は私を責任感のある人間に育て上げた。こういうことはそう簡単に忘れられるものではない。

 

 会社の仕事でモスクワのデータセンター建設現場に向かい、いい加減な工事、ひどい扱いの外国人労働者、警察権力ぐるみの不正を目の当たりにした。

 かれは会社をやめ、ウィキリークスに専念する。

 

 

 7

 各国が行うネット検閲に対する抗議活動について。

 政治的社会参加の方法……

・不正の告発

・現在進行形のプロセスに対する申し立て

 

 

 8

 「報道の自由」が確保される場所、ジャーナリズムヘイブンを作るために、アサンジ一行はアイスランドに滞在し、政治家に働きかけた。

 

 

 9

 有能な技術者たち……アーキテクトやエンジニアについて。

 寄付や支援金などで資金が集まった。

 アサンジは、反乱者組織を目指していた。しかし、ウィキリークスを中立な報道機関と考える著者とは意見が異なった。

 間もなく、給与の支払いをめぐり、トラブルが発生した。

 

 

 [つづく]

 

ウィキリークスの内幕

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