うちゅうてきなとりで

The Cosmological Fort 無職戦闘員による本メモ、創作、外国語の勉強その他

『アウステルリッツ』ゼーバルト

 ジャック・アウステルリッツという建築研究者との交流について。

 アウステルリッツは、ヨーロッパ各地の建築や風景についてコメントしつつ、やがて収容所に連れていかれた母親の思い出を語る。

 本全体が人物の回想となっており、茫漠とした印象を受ける。

 ベルギーやロンドン、チェコの風景や公共建築についての所感から、やがてドイツ統治時代の非道な風景や、テレジエンシュタット収容所の建築様式、「管理」への執着、ドイツ人に対する恐怖感等が浮かび上がっていく。

 ヨーロッパの歴史は「奴隷帝国」ドイツによるホロコーストに結実した。

  ***

 ――今では自分でも信じがたいのですが、私はドイツによるヨーロッパ征服についても、彼らの打ち立てた奴隷制国家についても、私が難を逃れてきた迫害についても、何ひとつ知らなかったのです……私にとって、世界は十九世紀末で終わっていたのでした。そこから先に踏み出すことは怖じていた。私の研究対象である市民社会の時代の建築史も文明史も、そのことごとくが、当時すでに輪郭を明らかにしつつあったあの災厄へと雪崩れこんでいくものであったにもかかわらず。

  ***

 本の中に、内容とつながった写真が使われている。駅舎、廃墟、墓、工場、要塞の写真や、人びとの顔やふくろうの写真である。

 

改訳 アウステルリッツ (ゼーバルト・コレクション)

改訳 アウステルリッツ (ゼーバルト・コレクション)

 

 

無職戦闘員の白昼夢 フセインの首

 無職戦闘員は、ふと昔のことをおもいだして、そこでは夢を見ている自分が過去の記憶を思い出そうとしてメモ帳に手入力しているところだった。

 無職日記には、わたしの架空の記事が残されている。

 

フセインの首

 イラク戦争に関する大義名分の1つ(大量破壊兵器)が偽情報であり、また合衆国自体はそれを承知していた可能性が高い。

 日本政府の態度……属国であり情報も米国依存なので仕方なかった、だまされた、という見解ではない。

 政府の大前提が、「イラク戦争は正当である」というものである。

 いっさい反省点はない、よって、騙された・騙されていないという以前の問題である。

 なぜなら正しいことをしたのだから責任も反省もない。

 それが政府の方針だが、筋が通らないので、かれらは極力触れないようにしている。

 わたしが後悔しているのは、当時自分自身が戦争を支持していたことである。

 

 人道復興支援という名目で活動していた集団がある。

 空の〇〇は、では何を運んでいたかというと、復興支援の文物ではなく、合衆国軍である。

 例えば病院船が、自国または同盟国の作戦のために兵を輸送していたらそれは問題ではないのか。

 人道復興支援というのは名目で、実態は合衆国軍の下請け会社、補給輸送担当なのである。

 

 無職の視覚像が脳みそに映し出される……。

 この便に乗って帰ろうとおもったところ、アメちゃんにすごい剣幕で追い出されそうになった。

 アメリカの飛行機ではなく空の〇〇の飛行機であるにも関わらず、図体のでかい兵隊に道をふさがれた。何を運ぶのかとおもって中を確認したら、大量の棺が搭載されていた。貨物エリアに無数の棺が整然と並んでいる風景が印象的である。わたしたちはアメちゃんの屍体を運んでいた。

 なんとか乗せてもらい、わたしたち無職は、棺のあいだにうずくまって砂漠から離陸した。わたしたちは、「アメリカは半端ないなあ」と話しながらただぼーっ座っていた。

f:id:the-cosmological-fort:20170223213828j:plain

たとひわれ死のかげの谷を農王系 8 4人の幹部

たとひわれ死のかげの谷を農王系 8 4人の幹部

 

↓↓↓

http://ncode.syosetu.com/n2907dt/8/

 

たとひわれ死のかげの谷を農王系

http://ncode.syosetu.com/n2907dt/

小説家になろう』のサーバに移動します。

「チャイナ・シンドローム」

 制作:1979年

 監督:ジェームズ・ブリッジズ


 原発事故を偶然目撃したアナウンサーと撮影クルーが、事態を隠ぺいしようとする会社と戦う映画。

 かなり低予算なのか、画面やセットはチープである。BGMはほとんどない。

 しかし、組織の隠ぺい工作や圧力に対して抵抗する主人公たちや、自分の職業上の信念から内部告発を決心するジャック・レモン(映画「ミッシング」でも、「正しいことをせよ」の信念に基づいて活動していた)などの動きがよく描かれている。

 

 公開当時は、直後にスリーマイル島原発事故が発生したため話題になったという。

 地震による原発事故や、メルトスルー、会社と規制当局の癒着など、この映画で登場する要素が数十年後に現実となったことが不気味である。

 チャイナ・シンドロームとは、炉心が溶けて核が落ちた場合、地球の裏側の中国まで達するのではないかというジョークに由来する。