オバマが大統領となった時期に出た本。
読んだ印象では前作以上に感情的な本で、アメリカの悲惨な実態が列挙される。
全く知らなかった問題もあるので参考にはなる。
1 公教育
アメリカにおける大学の学費は70年代から上昇していき、現在は大半の学生がローンを組んで学費を賄っているのが現状である。
かつては数十万円の学費で大学を卒業できたが、今は、一般的な大学でも300万~400万、アイビーリーグであれば年間1000万以上が必要である。
大学に入る際にもっとも重視されるのは親の職業や年収、家柄である。
学資ローンは、住宅ローン以上に深刻な問題となっていた。
サリーメイと呼ばれる民間ローンが政府ローンを締め出し、学生たちは高利のローンを借りて大学に通う。
大卒でなければ、マクドナルドのような仕事で一生食いつなぐことになるからである。しかし、ローンの支払ができず多重債務者になる人間が続出している。
著者によれば原因は新自由主義にあり、政府が教育費を削減し、ローンや大学を民営化したことで起こったという。
2 社会保障
アメリカにおいては伝統的に小さな政府の指向が強く、公的年金は抑えられてきた。代わって企業が年金制度により退職者の老後を保証してきたが、市場の変化や少子高齢化により制度が崩壊した。
また、公的年金制度もすでに破たんが確実である。
身の丈に合わない消費をする、貯蓄をしない、目先の利益を重視して長期的な考えを持たないというアメリカの慣習が問題を悪化させていると著者は考える。
3 医療改革
医療保険会社と製薬会社による医産複合体が強い力を持っているために、アメリカの医療費、保険料は高く、国民の6人に1人が無保険である。医療費の高さにより破産する人間も多い。
欧州や日本で施行されている国民皆保険制度の導入がこれまで検討されてきたが、議会や圧力団体の反対により頓挫してきた。
メディケア、メディケイドは障害者、低所得者向けの掛け金なし、または低掛け金の公的医療保険制度である。しかし、財政を圧迫している。
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本書ではオバマケアの顛末は書かれていないが、ニュースを調べたところ次のとおりだった。
オバマケアは成立の過程で保険会社、製薬会社の介入を受け、「民間医療保険の強制加入制度」となった。保険会社は保険料を釣り上げたために、医療費はさらに増大したという。
4 刑務所
90年代から民間刑務所が増え始め、また刑法の改正等により囚人の数も増やされた。
囚人は低賃金労働力として重宝され、さらに刑務所での生活費用も請求され、借金まみれとなって出所する。
スリーストライク法により、3回有罪判決となった者は終身刑となる。企業は民間刑務所への不動産投資と、囚人労働力を歓迎する。
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スノーデンが訴えたのと同様、オバマ大統領への疑念はこの本でも追求されている。
アメリカの問題の根底にあるのは、著者によれば政府と企業の癒着である(コーポラティズム)。