IDF(Israel Defense force)とその特殊部隊だけでなく、イスラエル社会やユダヤ人、テロリズム等についても書かれており、対テロ政策や軍事政策について考えるきっかけになる。
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著者は純粋なイスラエル人ではなく、カナダ人である。
母親に連れられて引っ越しを繰り返し、ビヴァリーヒルズで生活するが、贅沢と放任の生活に耐えられず、親の意向でロバート・ランド・アカデミーに入れられる。
カナダの伝統的な私立軍学校で、教育は少年工科学校のようなものである。ただし、軍の付属ではなくあくまで私立であり、進路は名門大学から軍まで様々である。調べたところ学費は年間400万円前後だった。
アカデミーの校長からイスラエル軍の話を聞き、著者はイスラエルに移住し特殊部隊員になる夢を持った。
高校生のあいだは自主トレーニングとヘブライ語学習に励み、卒業と同時に移住プログラムを利用してイスラエルに向かった。
以上のように、著者はイスラエルの建国理念と、イスラエル軍の活躍に惹かれて、入隊したという経歴を持つ。
こうした人間は現在では少数派であり、本国では、軍人や軍に対する敬意は、特に若い世代の間で低下しているとのことである。
兵役により入隊してから、訓練を経て、実任務に就くまでが細かく書かれている。
特殊部隊は終身雇用の職業軍人がなるものだと思っていたがそうではなく、著者のような任期制の隊員も配属されるらしい。
わずか3年の間に専門的な工作員、戦闘員に仕立て上げる教育制度が驚異的である。
徴兵制は現代戦では役に立たない、と一部では言われているが、短期間で戦闘員を養成することは可能である。
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1 イスラエル情勢
イスラエルはイルグン、パルマッハ、ハガナー等、反政府組織、準軍事組織、テロリストが作り上げた国家であり、歴代首相の多くはそうした戦闘員の出身である。
IDFは徹底的な現実主義を採用しており、パレードの練習や制服のアイロンがけ、靴磨きは行わない。また大量の実弾を使って訓練を行い、対テロ作戦や掃討作戦においても教訓を活かし実際的な戦術を用いる。
キブツ(ユダヤ人コミュニティ)には退役した軍人、特殊部隊員が集まる。
近年では、若い世代の間で軍隊の魅力が低下している。
かれらは戦士としてイスラエルを守ることよりも、大学や都会で楽しむことに価値を置き、アメリカやイギリスに行きたがる。兵役では極力楽な仕事を求める。
著者のように、特殊部隊員の伝記を読み漁って工作員にあこがれる人間は奇特な人間だと思われたようだ。
2 対テロとは
著者によればハマスはマフィアと同じである。
ハマスは組織だって活動し、また政治団体を装ってはいるが、実態は犯罪集団である。地域住民を脅迫し、子供を拉致し自爆要員に仕立て上げる。実行犯は何も知らされていないことが多いため、IDFが標的にするのは資金調達者や計画者である。
イスラエルの対テロ対策は世界でもっとも高度である、と著者は自負する。
アメリカは高価なハイテク機器をそろえるが活用しない、また、人間の頭脳を使わず、体ばかり鍛えている。アメリカの警官はテロリストを銃撃するとその後の書類や正当性の説明に追われる。このため、迅速な対応に歯止めがかけられてしまっている。
イスラエルにおいては、テロリストは速やかに殺害しなければならない。群衆の中に紛れ込んだテロリストを射殺する訓練も必須である。
市民の自由よりも、市民の命を守るためにテロリストを殺害することを重視する。
かれは、こうしたイスラエルの価値観が容易に受け入れられるとは思っていない。
常にテロと攻撃の脅威にさらされているので、何かを犠牲にしなければ国家を維持することはできないからだ。
3 著者の活動
基礎訓練後、特殊部隊サイエレット・ドゥヴデヴァンの訓練隊に配属され合格し、ヨルダン川西岸地区の占領地域に潜入する任務に従事した。
サイエレット・マトカルは伝統ある特殊部隊であり、バラク首相や、ネタニヤフ(現首相)の兄弟も所属していたが、純粋イスラエル人で、なおかつ血統が良くないと入れないとわかった。
サイエレット・ドゥヴデヴァンは占領地域のテロリストの捜索と逮捕が任務であり、アラブ人に変装して潜入する。
著者は銃の取扱いや地理情報把握訓練の他、変装とアラビア語の訓練もさせられた。
しかし、テロリストの指名手配犯に近づき逮捕、射殺する仕事をするうちに、精神を病んでいった。
一部の将校や職業軍人を除いて、特殊部隊任務に就くことができるのは1年弱である。それ以上は精神がもたなくなるからだ。
士官学校の受験を勧められるが、かれは軍隊に嫌気がさしており、すぐにアメリカに戻った。
その後、経験を活かしてセキュリティ会社を設立した。
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その他のメモ
イスラエルの特殊部隊……サイエレット・マトカル、サイエレット・シャルダグ、シャイエテット・13。
ジョブニク……IDFにおいて事務仕事だけをすること。
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・わたしの学校にいたイスラエル人は、「軍の将校はデブばかり、軍は賄賂、汚職だらけ」といって毛嫌いしていた。
・組織上の相違点……「パレードの練習や制服のアイロンがけ、靴磨きは行わない」。また、継戦能力確保のため、兵隊の生命を尊重する。
- 作者: アーロン・コーエン&ダグラス・センチュリー,中村佐千江
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