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うちゅうてきなとりで

the cosmological fort 無職戦闘員による本メモ、創作、外国語の勉強その他

『ヤクザと原発』鈴木智彦

 暴力団ライターが原発作業員として現場に潜入する手記。

 ヤクザと原発事業との関係を体系的に説明するのではなく、潜入手記・メモの形をとっている。

 

 原発事業は東電を頂点としてプラントメーカー(東芝、日立等)、その下に下請けピラミッドが構成されているが、稼働前から暴力団との関わりが深かったとのことである。

 公共工事では土地の取得や作業員の調達が必要なため、どうしても暴力団の入り込む余地ができてしまう。

 暴排条例後、九州や関西では暴力団が表立って看板を掲げることは難しくなった。しかし東北ではいまだに暴力団員が会社役員として名を連ね、また暴力団と取引する会社等も多い。

 震災時、福島第1原発に残って作業した社員の中には、暴力団員が含まれていた。

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 著者は組員のツテを頼りに原発作業員として潜入することに成功した。暑さと放射能に苦しめられる復旧作業の実態が描かれる。

 東電や政府が、放射能汚染に関してごまかしをしている点が指摘されている。

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 ――原発が都市部から離れた田舎に建設されるのは、万が一の事故の際、被害を最小限にとどめるだけではない。地縁・血縁でがっちりと結ばれた村社会なら、情報を隠ぺいするのが容易である。建設場所は、村八分が効力を発揮する田舎でなければならないのだ。

 ――暴力団原発シノギにできるのは、原発村が暴力団を含む地域共同体を丸呑みすることによって完成しているからだ。原発は村民同士が助け合い、かばいあい、見て見ぬふりという暗黙のルールによって矛盾を解消するシステムの上に成り立っている。

 ――……1Fの復旧作業に関わり、原発が人間の手に負えない産物であることは実感した。

 ――……全国の暴排条例は、その大半が公共工事から暴力団に流れる資金を遮断する目的で作られている。電力関連事業との癒着は、これまで見逃されていた分野で、本格的な取り締まりが行われているとは言いにくい。とくに原子力発電のように、あちこちにタブーを抱え、潜在的な隠ぺい体質を持った産業は、暴力団の生育条件としては申し分ない。発電所事業の中で、原発がもっとも棲みやすいエリアであることは間違いない。

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 原発事業は、東電・メーカーと、地元の社会が密接につながることで成立している。

 放射能汚染については正確な知識がないと判断することができないため、調べていく必要がある。 

ヤクザと原発 福島第一潜入記 (文春文庫)

ヤクザと原発 福島第一潜入記 (文春文庫)