うちゅうてきなとりで

the cosmological fort 無職戦闘員による本メモ、創作、外国語の勉強その他

『日本に足りない軍事力』江畑謙介

 今は事情が変わっている箇所もあるようだ。


 安全保障とは、

1 経済的制約
2 技術的制約
3 政治的制約

 といった条件のなかで「予想される脅威に対して備えておく」ことをいう。脅威に対して、適切な防御対策を実施することが重要である。

 ――……日本には遠方にある地上・地下の目標を攻撃する能力を持っていないというのが現実である。それは、日本が自衛隊の役割として、また(政府独自の)憲法解釈から、日本が持ちうる自衛力の限界として、この種の長距離攻撃能力を持たないように「自粛・自制」してきた結果に他ならない。……だが長距離攻撃能力がないということは、「抑止力」としての防衛力の半分の要素(効果)を欠いているということでもある。

 著者は2008年時点で自衛隊に欠けている能力として次の5項目をあげる。

1 弾道・巡航ミサイル防衛

2 長距離攻撃能力

3 空対地精密攻撃能力

4 パワープロジェクション能力

5 宇宙戦・サイバー戦能力

  ***

 1 直接撃破機能についてはPAC3が存在する。しかし、弾道ミサイルにくらべて探知の難しい巡航ミサイル防衛についてはこれまでほとんど無視されてきた。著者は、巡航ミサイル探知のためには、早期警戒機、無人高高度飛行船、監視衛星、無人機等の運用が必要と考える。また、ミサイル撃破のための戦闘機についてはF-22である必要はなく、F-35が最適だろうと予測している。この予測は的中した。

 2 ミサイル発射台を遠方から撃破する能力については、戦闘機の航続距離、爆弾の性能ともに日本には欠如している。また、この状況が改善される見込みも薄い。地下施設等を破壊するには核兵器が最適だが、政治的制約から、日本が核ミサイルを持つ状況は当分来ないとおもわれる。

 3 日本には近接航空支援の能力がない。つまり、空軍が陸軍を支援し、うまく連携して爆撃するという訓練をしてこなかった。

 精密空対地攻撃にはGPS誘導爆弾(JDAM)というものがあり、日本ではまだ配備されていない。

 米空軍は「コンバット・コントローラ」という特殊部隊を養成し、陸上部隊に同行させている。かれらは現地から爆撃誘導等を行う。

 ――……実際問題として、完全な制空権を確保して、維持できるという可能性もまた少ないので、地上部隊(陸軍部隊)の存在意義が失われることはない。地上戦闘部隊は次章で述べる「パワー・プロジェクション」能力を保持する目的でも、また国際的な平和維持活動などの目的からも重要になってきている。

 島嶼防衛においては近接航空支援及び航空攻撃が重要となる。精密爆撃能力を持つためには、コンバット・コントローラが有用であると著者は書く。これらすべては統合運用の必要性に至る。

 情報のリアルタイムの活用という点で日本は米英に大きく遅れているという。

 ――……2008年中期時点で、航空自衛隊には敵の地対空防衛網の外から目標を精密に攻撃できる空対地兵器はない。敵のレーダーを攻撃する対レーダーミサイルもない。……航空自衛隊には陸上自衛隊に対する近接航空支援能力はないし、それを行う意志もないということである。

 4 パワープロジェクション(兵力投入)には、輸送、指揮通信、ロジスティックスの3要素が必要となるが自衛隊にはこれが欠如している。

 最大の弱点は空母がないことである。

 5 宇宙利用における遅れ……偵察衛星の数が少なく、気象観測衛星を持たず、GPSを米国に頼り、通信衛星は民間のものを借りている。

 サイバー戦の発達に伴い、自衛隊ではC4SCやサイバー空間防衛隊等の設立を進めている。これら部隊の具体的なサイバー戦術は公開すべきではない。

  ***

 ――……保有したくても経済的事情でできない場合は別として、自ら持つべきではないと判断したことが世界の求めるものと合致しないなら、それは世界に対する役割、義務の回避と受け取られても仕方がない。

 「現実的判断をなすためには現実の情報が必要」である。

日本に足りない軍事力 (青春新書INTELLIGENCE)

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