うちゅうてきなとりで

the cosmological fort 無職戦闘員による本メモ、創作、外国語の勉強その他

『漢字伝来』大島正二

 目的……「本書は、……漢字がたどった日本語化への道程を追跡し、私たちの祖先がどのようにして漢字・漢文を自家薬籠中のものとし、なぜそれができたのかを日本語・中国語構造の違いや古代朝鮮の文化的影響、東亜細亜諸国の漢字との取り組み方なども視野に入れ、エピソードを織り込みながら探ろうとするものである」。

 

 日本に漢字が伝わったのは1、2世紀だが、文化として取り入れられたのはもっと遅い。

 ――文字とは、言うまでもなく、意味と音の結合体である言語を書き表すための記号である。その記号としての漢字の知識と理解がひろく日本にもたらされたのは、おいおい説くように、どんなに早く見ても4世紀のことと思われる。それには朝鮮半島からの移住者の力によるところが大きかった。

 行政文書・記録における漢字の導入から、写経や教育を通じた普及を経て、漢字文化が確立するまでを解説する。

 十七条憲法は日本における漢字文化の確立を示すものだが、その後、漢字の日本語化への取り組みがはじまる。万葉仮名の後、カタカナ、ひらがなが使われ、日本は独自の漢字かな混じり文を使用するようになった。

 

 他国の漢字導入の取り組み……李氏朝鮮はハングルを発明するが、当時、中国文化追従の風潮が強かった国内で反発を食らい、利用されなかった。ハングルが国字として本格的に採用されたのは、第2次世界大戦後である。

 元王朝は漢字の取入れを嫌い、チベットの高僧パスパに独自のモンゴル文字をつくらせたが、使い勝手が悪く、元王朝滅亡後すぐに廃れた。同じように、西夏文字契丹文字女真文字もほとんど使われることがなく、今では解読困難な文字となった。

 ベトナムでは独自の漢字の使用が試みられたが、列強による植民地化の際、アルファベットをもとにした国語(クォック・グー)が導入された。

 西洋の言語学はこれまで文字を軽視してきたが、日本を含む漢字文化圏においては、文字もまた重要な言語の要素である。

漢字伝来 (岩波新書)

漢字伝来 (岩波新書)