この作者は昔いくつか読んでよくわからなかったのでそれ以来まったく読んでいなかった。この本や、「わが友ヒットラー」等の戯曲は抵抗ないが、小説は文章が好みに合わないので回避している。
能を、近代風に改造した作品集。
どこかできいたことがある話と、原典をまったく知らないものがある。一生の夢を見てしまう枕の話や、鳴らない鼓の話など、古典的な題材に、ひとひねりくわえられている。必ず、非現実的な要素がふくまれる。
台詞は、知ったような口をきいているものもあるが、印象にのこったもの、笑えるものもある。
――合唱 うおお、うおお、うおお……
次郎 あれは何だい?
秘書 何、お気になさるには及びません、組合の連中が騒いでいるのでございます
「卒塔婆小町」では、老婆が美人の娘の幻をつかって命をうばう。「葵上」では、恨みによって生霊が出現し、女を呪い殺す。
原典の謡曲をしらべることにした。