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うちゅうてきなとりで

the cosmological fort 無職戦闘員による本メモ、創作、外国語の勉強その他

『中国の旅、食もまた楽し』邱永漢

本メモ ◆日本のフィクション

 大陸の中華料理にこだわったエッセイで、自分のいってきた場所も紹介されている。ウルムチトルファンあたりの観光ルートはわれわれが行ったのとそっくりそのままで、あれほどの僻地においても観光業が確立しているのだとおどろかされた。

 香港は邱永漢によれば「食以外にろくな文化のない町」で、大枚をはたいて本場広東料理を食べることだけでなく、庶民の利用する飯店もおとずれるべきだとすすめている。無錫、杭州など、電車で通過しただけのところや、一応足を踏み入れたところものっているが、いかに前回の自分の旅行がそまつな食事ばかりだったか思い知らされる。杭州のすぐそばには紹興酒のメッカ紹興や、寧波があり、ここも料理のうまい場所らしい。

 料理だけでなく、商売にまつわる説話やエピソードも豊富に紹介されている。上海商人のほとんどは寧波や杭州出身であるが、これは関西商人と近江人の関係に近いという。

 

 香港は金がなければ生きていけない、と「香港」で書いていたが、たしかに金をもっていなければ料理を存分に味わうことはできないらしい。

  ***

 ――……知らない町に行くと、まず市場に出かけて行ったり、工場の見学に行く。新蹟とは、人々が現にメシのタネにしているところのことであり、どんな工場ができて、どのくらいの人がやとわれ、どのくらい給料をもらっているか、は町の将来の繁栄に影響することである。

 官僚専制政治だけが中国ではない。利己主義と利に聡い庶民たちのつくる経済社会もまた中国の属性のひとつをなしている。

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 成都西安重慶、マカオ、広州、南京、それに香港など、いくべき場所はたくさんある。

 著者の来歴を読むと、いかに国籍が恣意的なものにすぎないかがよくわかる。中国と台湾の違いは国民党と共産党との抗争から生まれたものにすぎない。

 

中国の旅、食もまた楽し (新潮文庫)

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