うちゅうてきなとりで

the cosmological fort 無職戦闘員による本メモ、創作、外国語の勉強その他

『中国 危うい超大国』スーザン・シャーク

 中国にとって第一の危険は社会擾乱であり、胡錦濤が「社会的安定」「和諧社会」をとなえるのはこのためである。中国経済は米国との共依存関係にあり、どちらかがコケると相手も損害をこうむる。またドル人民元のレートは管理されているが、これが自由化された場合にどうなるかが不安材料となっている。

 格差は拡大を続け、建前は社会主義国でありながら福祉の役割は皆無に近く、教育にあてる予算は途上国のなかでも低い。環境問題は周知の通りである。共産党がもっとも恐れるのは秩序の乱れによる体制の転覆であり、天安門事件の再来である。

 人民解放軍は、近年は一般市民とともに党が気を使わなければならない相手であり、強硬発言と予算拡大によって機嫌をとっている。鄧小平は、軍事改革指令を出し、予算を(相対的に)減らすことで、解放軍を少数精鋭の職業軍隊に変身させることに成功した。

 江沢民胡錦濤など第三世代の指導者には軍隊経験がないため、解放軍と強い関係を保つには予算増などの手段に訴える必要があるのだ。中国軍人は現在、タカ派の牙城である。

 インターネットの発達は中国における情報の流れを大きく変え、Web世論は党や外交官もつねに気にするものとなった。一般的に、インターネット上でわざわざ意見を披瀝するものには過激な考えの持ち主が多いが、なぜ党は過激思想ばかり気にするのだろうか。中国は民主主義ではないために、過激思想の持ち主によるデモや訴えが即座に秩序の乱れにつながりかねない。ネット世論に過剰に反応するのはこのためである。

 中国は日本にたいしては強硬だが、ほかの周辺諸国やアフリカにたいしては温和で協力的である。中国はかつてのソ連とは異なり多国間協力を目指しており、それはASEAN+3や六カ国協議などでの立ち回りにもあらわれる。平和的な国際関係は中国の発展に不可欠であると、中国自身が考えている。

 中国世論が注目する国際ニュースは、おもにアメリカ、日本、台湾についてのものである。江沢民時代にはじまった反日ナショナリズム教育は、いまや党もコントロールに四苦八苦するまでに成長してしまった。

 デモや暴動が日中関係に支障をきたしたり、党批判に転移することを胡錦濤らは恐れている。

 台湾もまた中共の屈辱のあかしであり、慎重を要する問題である。台湾独立をゆるすことは維吾尓や西蔵の独立もゆるすことにつながり、最終的に中国が空中分解するにちがいない、と政府は考えている。中台米を交えての、独立と統一をめぐる小競り合いがつねに繰り広げられている。中台問題の動向は台湾が民主化し、李登輝陳水扁馬英九と総統がころころ変わるために見通しのつかないものとなった。

 米国にたいしても世論は激しやすく、九九年のユーゴ中国大使館誤爆、〇一年の解放軍機と米軍偵察機の衝突の際には大規模なデモが起きている。

 現代中国においては世論の沸騰といった内憂と、これがおよぼす外交への悪影響(外患)が表裏一体である。

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 著者が結論として提示するのは米国の軍事力による東アジアの安定であり、米軍の圧倒的優位、日本の軍事大国化の阻止、台湾の独立阻止、中国の激昂阻止である。

 

中国危うい超大国

中国危うい超大国