うちゅうてきなとりで

the cosmological fort 無職戦闘員による本メモ、創作、外国語の勉強その他

『朝鮮戦争』神谷不二

 朝鮮戦争は1950年から1953年まで続いたが本書は主に政治の面から朝鮮戦争を取り扱う。

 日本の降伏後、朝鮮は38度線を隔てて米ソに委任された。ソ連の強い影響のもと、北朝鮮が韓国に侵攻を開始したことで戦争がはじまった。アメリカは国連軍の名のもと韓国側に参戦するが、中国の介入を懸念して38度線以北への進軍を認めなかった。

 朝鮮戦争においては、米国の戦争目的の混乱および政軍関係の問題が顕著である。

 トゥルーマンら指導者の掲げる戦争目標は、戦前状況への復帰から北朝鮮の制圧、そして休戦へところころ変化していき、このため現地軍や米国民は困惑した。戦争目的の不在や不安定は致命的なあやまりであり、これが老将軍マッカーサートゥルーマンとの対立を招いた。

 太平洋戦争以来、極東の軍事司令官および軍政の最高責任者の地位にあったマッカーサーは、北朝鮮および中国軍の撃滅を強硬に主張する。彼の声明は何度も政府見解と衝突したため、ついに罷免される。

 中国が介入した理由について、著者は政治的目的をあげる。共産主義の大国として、北朝鮮を援助することが西側諸国に対する意思表示および面子の保持につながると考えたのである。

 戦争が長引いた結果、北朝鮮と韓国は休戦協定を結ぶ。この戦争によって冷戦構造がくっきりと浮かび上がり、また米国は後に「ドミノ理論」となる反共政策を確立させることになった。ジョージ・ケナンによる「X論文」は、封じ込め政策を提唱したが、この政策は以後の米国の外交に反映される。

 朝鮮戦争が日本に与えた影響は大きい。この戦争によって日本は反共の砦として育成されることになり、また要請によって再軍備をおこなった。朝鮮特需は日本の経済復興の足がかりとなった。

 戦後国際政治を知る上でも朝鮮戦争は無視できない要素であると考える。ソ連および中国側の史料は、本書にはほとんど反映されていない。よってより詳細に考えるなら別の本も読む必要がある。

 

朝鮮戦争―金日成とマッカーサーの陰謀 (文春文庫)

朝鮮戦争―金日成とマッカーサーの陰謀 (文春文庫)