英米法の解説をもとに、イギリス、アメリカのものの考え方を検討する。
1 概観
英米法はイギリス法の伝統に多く影響を受けた法をさし、イギリス、アメリカの各州、コモンウェルス、インド等の法が該当する。
英米法が大陸法と異なる発展を遂げた原因は、ローマ法の影響をほとんど受けず、ゲルマン法に由来する特徴を保持してきたことにある。
英米法の8つの特徴
1 歴史的継続性
現行法の最古のものは1225年のマグナ・カルタである。判例も18世紀のものがいまだに用いられている。
2 歴史的淵源の多様性(コモン・ローとエクイティ)
主なものにコモン・ローとエクイティがあり、ほかにlaw merchant商慣習法、canon law教会法などがある。エクイティはコモン・ローを補うような機能をもつ。
4 各論的考察の重視
体系化をしておらず、総則や総論がない。法を、抽象的一般的な原則ないし指針としてではなく、事実の型に即して形成されたルール(準則)の集積としてみる。
5 救済の強調
裁判所によって執行力のあるもののみを法律としてとらえる。美辞麗句であっても拘束力のないものは軽く見られる。
6 私人による法の実現、権利と自衛
英米法は自力救済を原則とする。また正当防衛の範囲も広い。
――日本では、権利とはどこかほかから与えられたもので、権利の侵害があればお上がなんとかしてくれると考える傾向がないわけではない。ところが、英米人にとっては、権利とは、本来それぞれの人間が主張し、実現すべきものと観念される。そして、そのために相応の手間と金をかけなければならないということは、当然だと考えられている。
7 法曹一元
弁護士検察裁判官は互いに交流する。通常、弁護士や検察として経験を積んだ者が長老格として裁判官になる。
8 陪審制
法律問題は裁判官が、事実問題は陪審が担当する。陪審制は法が一般人にとって理解不能となるのを防止する作用を果たす。集中審議を行うため法廷技術が重要となる。また精密な証拠法が発達した。
(8つの特徴ここまで)
イギリス法とアメリカ法の違い。
連合王国は単一国家でありイギリス国家はスコットランドや北アイルランドの法律を変えることができる。しかし合衆国は連邦制であり、憲法を改正しない限り連邦がタッチできない分野が州法に存在する。むしろ、憲法に規定されていない限り連邦は州に対して法を規定することができない。
イギリスは国会主権parliamentary soverigntyといわれ、国会が決められぬ法はない。成文憲法はなく、いかなる法律も通常の手続きで変更できる。違憲立法審査権はなく、また国民投票は無い。これは、イギリスが国会に信を置いていることを示す。
政治的には国民に主権があり、法律的には国会に主権があるといわれる所以である。
イギリスにおける法の支配とはまさに法が国王と国家を支配するということで、かれらは自然法に従うべきとされている。
アメリカにおいては違憲立法審査権が力を持つ。このため裁判官、裁判所が国家の政治過程の上で大きな役割を果たす。
アメリカでは人民による統治が理想とされ、選挙で選ばれる役職が多い。特に官僚やエリートによる支配に対して根強い抵抗がある。
[つづく]