ケインズ曰く「知的影響から自由であると考える現実的な人びとは、往々にして故人となったエコノミストの奴隷である」。
巷に広まっている通説や、ベストセラーの主張のなかには、経済学から眺めると首を傾げざるをえないものも多くある。本書はこれら広く流布している偏見を指摘していく。
しかし経済学の基礎がなければ、この本が多く含んでいる皮肉やユーモアを、すべて理解することはできないだろう。よって、無学の私にわかる内容は限られている。
ある産業の生産性の増大にともなう雇用の減少が、経済全体の雇用の減少に結びつくことはない。また、生産の増加が消費の増加に結びつかないことはない。貨幣の供給の問題こそ、ケインズ経済学の本質である。貯蓄が高まると消費が低くなるのではなく、金利が上がるから消費が低くなるのだ。
金本位制への疑問。アメリカでは富者のあいだでもっとも所得格差が広がっている。下層の人間に自分の所得の位置を知らせないことは、富豪向けの政策に利する。現在のアメリカは金鉱探しの社会に近くなっているが、これを知られてはまずいのだ。
――どうしてグローバル・マーケットの重要性はおおげさに言われるのだろうか? それは、洗練されているように聞こえるからである……もっと深い原因がある。右も左も両政治勢力とも、実際問題は国内にあるにもかかわらず、奇妙なグローバル勢力がうごめいているとうそぶきたがるのである。
国内の失策を巨大な宇宙機械=グローバル市場に押しつける論法は、隆盛を極めている。海外資本による低賃金労働はないよりまし。
一国の貿易収支は、貯蓄と投資のバランスで決まる。労働集約、資本集約、技術集約。
専門用語を振り回している者よりも、ささいな経済モデルを理解している者のほうが正確に分析することができる。
金持ちの特権は金持ちと知り合いになれること、能力ある者の特権は能力ある者と知り合いになれること。格差が大きく、また階級の固定していない社会は満足度が低い。
「誰もが大統領になれる国では、大統領になれなければ人生の失敗者である」。
未来からみた現在
高等教育の衰退……ハーバードは上流階級同士の社交場になりつつある。
「情報の伝達と再現が日々容易になっているため、クリエーターが自らの創造から利益を得ることがより困難になってきていた」。
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この本の推薦書……スティグリッツ、エドワード・ウォルフ、カール・セーガン。
- 作者: ポールクルーグマン,Paul Krugman,三上義一
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