となりの、硫黄でできたとびらの奥は、ふだんは
入ることができない、わたしの弟の屋敷になっている
弟は大きな眼球をつかって、何重にもたばねられた、紫と金の
絹のなめらかさを操作する、するとひのきの、パチパチと音をたてて燃える
音のかたまり、かけらが、盆の上にのせられ、高熱の青銅を編んだ
固いひも飾りが、座敷のある一面にくくりつけられ
わたしの弟は首を衣裳だんすに収納するために
かえってくる、ぜんぶ、木片を組み合わせた、人の顔そっくりの、未処理のままの部位
という印象をいだいた
じゃばら、柿がおしつぶされたもの、かれは
こけの内部に、透明度の高い水滴、人がふれると筋肉が砂にかわるもの
これを伝統的な水がめに加える
わたしは、数え切れないくらい
弟の院のとびらからとびらへ、発火した障子をなぎ倒して、作務衣すがたの
いのししとかえるを目撃した
その人たちは、視界のはしに入ってくるので、夜おそく
または夢の中まで消えずにとどまることが
あった、両手をおなかの前あたりに出して、ひもと、祭りごとのための
鈴、油をぬりこめた木製の社を
大切そうに保持している、弟の右と左には、いくつかの大臣と
古い世代の兵器、または、長槍や、半自動の投石器を所有する僧兵たちが、笑いながら
待機についている
わたしは弟の名が読み上げられるのをきく
すると、巨大な気流の渦みたいな、羽織の回転、あたりをすっぽりとおおう風景を連想する