モロッコ駐留の外人部隊に所属する兵隊たちの話。それぞれ違う国からやってきた隊員たちは、真偽の怪しい自分の経歴について話す。逃げ出した者、高貴な生まれだが没落したもの、社会から外れたものが多数存在する。
部隊では尼僧院での売春が蔓延しており、また、レースという若者は現地の少女の父親に金を払い交際する。一部の兵隊は同性愛者や女装者であり規律を乱している。
こうした様子が、特に盛り上がりもなく漫然と続いていく。
モロッコ駐留の外人部隊に所属する兵隊たちの話。それぞれ違う国からやってきた隊員たちは、真偽の怪しい自分の経歴について話す。逃げ出した者、高貴な生まれだが没落したもの、社会から外れたものが多数存在する。
部隊では尼僧院での売春が蔓延しており、また、レースという若者は現地の少女の父親に金を払い交際する。一部の兵隊は同性愛者や女装者であり規律を乱している。
こうした様子が、特に盛り上がりもなく漫然と続いていく。
評論・エッセイ類を集めた本。
だいぶ昔に一通り読んだが、改めていくつかを読み直した。
◆小説・文学について
現実の代用としての言葉を否定し、絶対的な言葉こそが芸術となる。言葉は現実の模写や代用品ではない。
――言葉には言葉の、音には音の、色にはまた色の、もっと純粋な領域があるはずである。
――芸術は、描かれたものの他に別の実物があってはならない。芸術は創造だから。
――つまり芸術家とは自己の幻影を他人に強うることのできる人である。
想像は現実と対極にあるのではない。現実生活において人間はいつも想像を働かせている。想像もまた現実の1つである。
小説の文はその1文だけが名文であっても意味がない。小説全体として1つの意味を持たなければならない。
――作家の精神はありのままに事物を写そうとする白紙ではないのである。……言葉を芸術ならしむるものは、言葉でも知識でもなく、1に精神によるものである……。
FARCE(笑劇)は、単なる荒唐無稽として、悲劇や喜劇よりも一段下に見られてきたというが、著者はこの位置付けに反対する。
――ファルスとは、人間の全てを、全的に、1つ残さず肯定しようとするものである。およそ人間の現実に関する限りは、空想であれ、夢であれ、死であれ、怒りであれ、矛盾であれ、トンチンカンであれ、ムニャムニャであれ、何から何まで肯定しようとするものである。
・「枯淡の風格を排す」……正宗白鳥、徳田秋声ら自然主義作家の一部に対する批判。
――いわば自分の行為を全て当然として肯定し、同様に他人のものをも肯定し、もって他人にも自分の姿をそのまま肯定せしめようとする、肯定という巧みな約束を暗に強いることによって、傷や痛みを持ちまいとする、揚句には内省や批判さえ一途に若々しい未熟なものと思わしめようとする……。
・ドストエフスキーの「真実らしさ」の方法……
――脈絡のない人物や事件を持ち来たって捨て石のように置き捨てていく、そういうことも意識的に分裂的配分を行う際に必要な方法であろう……。
ペロー版「赤ずきん」、狂言の1つ、伊勢物語の1篇をあげて、救いのない、不条理な話について考える。
――そこで私はこう思わずにはいられぬのです。つまり、モラルがない、とか、突き放す、ということ、それは文学として成り立たないように思われるけれども、我々の生きる道にはどうしてもそのようでなければならぬ崖があって、そこでは、モラルがない、ということ自体がモラルなのだ、と。
――それならば、生存の孤独とか、我々のふるさとというものは、このようにむごたらしく、救いのないものでありましょうか。私は、いかにも、そのように、むごたらしく、救いのないものだと思います。この暗黒の孤独には、どうしても救いがない。
***
◆日本文化私観
◆青春論
◆咢堂小論
政治は理想と理論だけを唱えるものではない。大言壮語どおりに人間が動くことはあり得ない。
――死を見ること帰するがごとしなどと看板を掲げて教育を施して易々と注文通りの人間が造れるものなら、第1に日本は負けていない。かかる教育の結果生まれた人格の代表が東条であり真崎であり、軍人精神の内容の惨めさは敗戦日本に暴露せられたカラクリのうちで最も悲痛なる真実ではないか。日本上空の敵機は全部体当たりして1機も生還せしめないと豪語した結果の惨状はご覧のごとくであり、飛行機のことは俺にまかせて国民などは引っ込んでおれと怒鳴りたてた遠藤という中将が、撃墜せられたB29搭乗員の慰霊の会を発起して物笑いを招いているなど、職業軍人のだらしなさは敗戦日本の肺腑を抉る非惨事である。
――民衆が政治をもとめ、よりよき政党を欲するのは、自らの生活を高めるための手段としてで、政治家は民衆の公僕だとはその意味だ。まず民衆の生活があり、その生活によって政党が批判選択せらるべきで、民衆が党派人となることは不要であり、むしろ有害だ。
――政治は実際の福利に即して漸進すべきものであり、完璧とか絶対とか永遠性というものはない。
政治制度や組織が変えられるのはあくまで表面だけであり、人間の根本をなす家族という仕組みを検討しないことには、社会福祉の向上は望めないと著者は書く。
◆堕落論
***
坂口安吾は、達観や枯淡の美、滅びる者の美を批判し、生きている人間に常に目を向ける。
制作:1987年
監督:ベルナルド・ベルトルッチ
清朝皇帝のち満州国皇帝溥儀の一生についての映画。幼児皇帝の不自由な身分から抜け出したい一心だった人物が、過去の栄光と、祖国復活の夢に惑わされて再び操り人形になる。
溥儀の人生は思い通りにならず、家族は離散し、また意志も弱い。周りの人物たちも、阿片や迫害によって破滅していく。
中国最後の皇帝が、一労働者として幽霊のように消えていく様子が物寂しい。
・宮廷の映像、音楽が特によい。
・映像……宮廷の文物、衣装
・日本軍、甘粕の小物臭
・画質は悪い。
・人間の一生を2時間半強でまとめたため物足りない箇所もあるが……
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