うちゅうてきなとりで

the cosmological fort 無職戦闘員による本メモ、創作、外国語の勉強その他

『ホメーロスのイーリアス物語』レオニ・ピカード

 20世紀のイギリス児童文学作家が、『イーリアス』を子供むけに書き直したもの。

 ここ数年、岩波少年文庫を集中的にAmazonで買って、少しずつ読んでいる。人を引き付ける物語がどういうものなのかを知りたかったからである。

 

 トロイアプリアモスの子パリスに妻ヘレネーを奪われたメネラオスのために、ミュケナイ王アガメムノーン以下諸国の王と軍隊がトロイアを攻撃する(トロイア戦争)。

 「イーリオス」とはトロイアの別名である。

 個性のある人物が多数登場する。人間的に欠陥のある人物も多いが、かれらも神の加護や血統によって力を持つことができる。

 

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 ギリシアの神々には、戦士たちと血縁関係を持つものもあり、かれらは気まぐれに戦争を支援する。

 

 ――処女神アテーナーギリシア軍に力と勇気を与え、女神のアプロディーテートロイア軍に味方して、戦闘はトロイアの平原のいたるところでくりひろげられた。

 ――人間どもが戦っては死んでいくかぎりにおいて、どちらが勝ち、どちらが負けようと、アレースにとっては問題ではなかったが……。

 

 双方の軍には、問題人物がいて、和を乱す。

 トロイアのパリスは、戦争を起こした張本人でありながら、一騎打ちや戦いから逃げ回り、多くの兵隊が死んでも平然としている。

 パリスは、ヘレネーの返還にも反対し、トロイア人から恨みを買っていた。

 かれは物陰から弓を使って戦士に傷を与える。『イーリアス』では、弓は卑怯者の武器として扱われている。

 

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 ギリシア連合軍の司令官アガメムノーンは、傲慢な性格によってアキレウスを怒らせ、アキレスは一時戦闘から離脱する。ほかにも、配下の王たちに八つ当たりし反感を買う。

 また、戦況が悪くなると、撤退を主張したり、自分とその財産だけで逃げようとする。そのたびに部下に諫言される。

 

 ――アガメムノーン王よ。あなたはゼウスにだまされたといいました。そのことについては、わたしはなにひとつ知りませんが、あなたが生まれたとき、すくなくともゼウスがあなたに人一倍多くのものをあたえたことだけはたしかです。ゼウスはあなたに、ほかのどの王よりもひろい領地と大きな財産をあたえました。そこで、あなたはいま、われわれの最高指揮官となっています。ところが、ゼウスはあなたに、大国の王には欠くことのできない勇気だけはあたえなかったようです。

 

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・ディオメーデースとオデュッセウスのゲリラ攻撃、スパイの処刑

パトロクロスの身分偽りと、戦死

アキレウスの復讐、ヘクトールの死

プリアモス王による屍体回収

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 『イーリアス』後の物語

・パリスによるアキレウスの殺害

トロイの木馬

・帰郷

 

 ――ながい年月にわたるギリシア軍とトロイア軍の戦争は、このようにしておわった。結局は、勝った側にも敗けた側とおなじように、ほとんどなんの利益ももたらさなかった戦争であった。

 

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 物語の核は、親友のパトロクロスを殺されたアキレウスによる復讐である。パトロクロスは、アキレウスの装備を身に着けてトロイアの城に攻め込むが、ヘクトールによって殺害される。

 アキレウスは、アガメムノーンに侮辱されて以来、戦闘には参加しないと誓っていたが、親友の死によって復讐をおこない、ヘクトールを殺害した。

 古代ギリシアにおいても、戦死者の屍体は重要視されていたようだ。ヘクトールの父プリアモスは、単身アキレウスの陣地にやってきて、息子の屍体を回収させてほしいと嘆願した。

 

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 オデュッセウスは、口がうまく、また知略に長けた将軍して描かれている。現在の価値観とは相いれない、冷徹な古代の将軍である。

 かれらは夜、敵陣に忍び込み、兵隊を皆殺しにする。また、助命を嘆願した敵スパイの首を刎ねる。

 その後、トロイの木馬作戦で城に侵入した際は、プリアモス王を殺害し、ヘクトールの幼い息子(乳幼児)については城壁から放り投げて殺す。

 

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 ◆メモ

 トロイア

プリアモス

・パリス(メネラオスから妻ヘレネーを略奪した)

ヘクトール(パリスの兄)

 連合軍

ミュケナイのアガメムノーン

・スパルタのメネラオス(アガメムノーンの弟)

・ミュルミドーン人をひきいるアキレウスと、パトロクロス

・イタケーのオデュッセウス

・ティリンスのディオメーデー

・ピュロス王ネストール

・アイアース……大アイアースと小アイアース

 

ホメーロスの イーリアス物語 (岩波少年文庫)

ホメーロスの イーリアス物語 (岩波少年文庫)