うちゅうてきなとりで

the cosmological fort 無職戦闘員による本メモ、創作、外国語の勉強その他

『アヘン王国潜入記』高野秀行

 1995年、著者がミャンマーのワ州に滞在した記録をまとめたもの。政治的な文章や偏見、主義主張はそこまでうるさくないので読みやすい。

 1 アヘン生産地帯

 東南アジアのゴールデントライアングルとは、ミャンマー、タイ、ラオスの3点で囲まれた国境地帯を指す。標高があり乾燥しており、水はけの良い山岳地帯がアヘン栽培に適しているため、世界一のアヘン生産地となった。

 タイ、ラオス領は取締りが厳しいので、著者の訪問したミャンマーのワ州がもっともさかんである。ワ州はシャン州内の州であり、少数民族ワの独立を目指すワ軍が自治する地域である。

 人民中国成立後にビルマ共産党がやってきて以来、ワ人はアヘン栽培で生計を立て、また軍もアヘンビジネスを基幹産業としている。

 著者によればワ州の印象は、中国とビルマの間に浮かぶ陸の孤島というものである。

 2 村の生活

 約5か月にわたって村での生活を体験する。村はアヘンの栽培をしている以外は、東南アジアの寒村と変わらない。ゲリラ戦争のため男は軍に徴用されており、未亡人と老人が多い。人びとは控えめで礼儀正しいが、かつては首狩り族としてビルマ人からも恐れられていたという。

 アヘン中毒者は村には数えるほどしかいない。その割合は日本におけるアルコール中毒者のものとほぼ同じである。

 不衛生から著者はマラリアにかかり、シラミの被害にあった。

 3 政治

 ミャンマー少数民族を抑えるために軍部が独裁を敷いている。少数民族の独立を許さず、領地と天然資源を確保するという方針は、ビルマ軍も、アウン・サン・スーチーも変わらない。

 ワ軍は独立をうたっているが、軍人の給与は無に等しく、幹部は各々が宝石ビジネスやアヘンビジネスを経営している。また組織には利益でしか動かない中国系マフィアが入りこんでいた。

 軍は農村でつくられるアヘンの半分近くを徴収していた。

 4 アヘン

 後半は著者がアヘン中毒に陥る様子が細かく書かれている。はじめは体調不良の苦痛をやわらげるためにアヘンを処方してもらい、その時に心地よい感覚を味わった。その後は酩酊を得るために、言い訳とウソを使いアヘンを手に入れ吸飲した。

 アヘン中毒になると吸わないときに禁断症状が起こり、身体がだるくなり下痢になる。完全な中毒者は1日中アヘンを吸い続け、表情から喜怒哀楽が消える。

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 本書によればアヘンの原産地はわかっていない。それは野生種が見つかっていないからで、古来から人類とアヘンが関わってきた証拠であるといえる。 

 

アヘン王国潜入記 (集英社文庫)

アヘン王国潜入記 (集英社文庫)