うちゅうてきなとりで

the cosmological fort 無職戦闘員による本メモ、創作、外国語の勉強その他

『国家の罠』佐藤優

 当時(2007年前後)流行っていて、ちょうど作者が授業で講演に来ていたので読んだ本。

 この本によれば、日本を主導するのは官僚だが、そこに大衆の力を帯びた政治家がからむため制度は複雑になってくる。政治家は「トリックスター」であると彼は田中真紀子を指していう。

 イスラエルにはソ連崩壊後のユダヤ移民が大量に入国しており、人口の二割を占める。イスラエルとロシアのつながりは深い。さらに、中央アジア、アラビア諸国で台頭するイスラーム原理主義チェチェン独立派は密接なつながりをもっている。大陸はさまざまな要素で連関しているが、作者はこれを情報源として生かそうと考えていた。

 彼の巻き込まれた国策逮捕事件は、ちょうどわたしが高校生のころにテレビで放送されていた田中真紀子と外務省の争い、ムネオハウスなどの裏側である。

 

 いわく「日本の実質識字率は2パーセント」、「世論はワイドショーと週刊誌と中吊り広告でつくられる」。

 本書を読むまで北方領土問題について……この解決のために三井物産が大きく貢献していた。国際ゲームのプレイヤーは官と軍だけではない。日本を出れば官、軍、学、経済すべてが協力してゲームを進めているのだ。

 元検察官だった弁護士は「そもそも司法の独立など存在しない」という。今でも法の上に政治があるようだ。

 個人を犠牲にして自らの存続を重視するのが組織の倫理だが、外務省もこの原則に従って動く。外務省幹部らは多大な貢献をしてきた鈴木宗男に対し手のひらを返してなじり、作者を切り捨てる。しかし外務省の存続ひいては日本の国益のためにはこれが最良の道であり、作者もそのことをわかっている。

 彼のなかでは、組織人としての義務を遵守しようという意志と、外務省の裏切り者や教授に対する憎悪が対立していたようだ。

 ジャヴェル顔負けの西村検事(prosecuter)との戦いがおこなわれる。

 

国家の罠―外務省のラスプーチンと呼ばれて (新潮文庫)

国家の罠―外務省のラスプーチンと呼ばれて (新潮文庫)