うちゅうてきなとりで

The Cosmological Fort 無職戦闘員による本メモ、創作、外国語の勉強その他

『支那革命外史』北一輝

 本書は「清末革命の前後にわたる理論的解説と革命支那の今後に対する指導的論議である。同時に支那の革命と平行して日本の対支策および対世界策の革命的一変を討論力説してある。すなわち「革命支那」と「革命的対外策」という二個の論題を一個不可分的に論述したものである」。

 曰く、支那革命にたいする正しい理解・見解をもつものが当地にはほとんどいないので、著者がそれをおこなうことにした。

  ***

 孫文支那革命の立役者だが、彼の思想が支那革命を代弁すると考えるのは誤りである。彼が排満興漢の際に外国勢力の援助を求めたのは正しいが、アメリカ流の政治制度を求めた点に誤りがある。

 中国の革命思想は日本の維新からの思想的影響が圧倒的に強い。日本から学ぶために清朝は大量の留学生を派遣したが、漢訳された日本語文献は結局清朝を滅ぼすことになった。これは江戸期における国学、英国とフランスの関係と同じである。

 袁世凱に対するたたかいは、排満興漢のための過程である。清朝を滅ぼしたのち、旧階級の代表たる大総統袁世凱を排除する必要があった。フランスと日本の革命を賞賛しながら中国のそれを軽侮する論客にたいして北は反論をおこなう。

 明治三十八年、内田良平宮崎滔天(とうてん)の斡旋で広東派、湖南派の「中国同盟会」が結成される。しかし孫文の米国的思想と、黄興の「排外的なる国家思想」との距離ははなはだしかった。

 日本人は辛亥革命においてほとんどなにも貢献していないから、彼らが排日運動をはじめたからといって忘恩の徒と非難するのはあやまりである。そもそも明治維新も排外運動からはじまったのである。

 ――劣弱者を侮蔑するの心はすなわち優強者に拝跪する奴隷の心なり。米人に凌辱されて一拳を加えざる卑屈は支那の覚醒を侮慢し成敗によりて国士を笑罵する尊大なり。

  ***

 辛亥革命に関する基礎知識が足りない。

 

支那革命外史 抄 (中公文庫BIBLIO20世紀)

支那革命外史 抄 (中公文庫BIBLIO20世紀)