うちゅうてきなとりで

The Cosmological Fort 無職戦闘員による本メモ、創作、外国語の勉強その他

2015-02-06から1日間の記事一覧

『トラークル詩集』

色彩をやたらとつかうのはヘボ詩人のやること、とゴットフリート・ベンが批判した際、その例外としてあげられたのがトラークルである。ベンの賞賛の通り、どの詩にも大抵「なに色の」ということばが含まれていて、鮮烈な印象をあたえる。 ひなびた農村、田舎…

『続・春日井建歌集』

「白雨」 「未青年」にあったような鮮烈さ、血の匂いはなく、前に読んだ歌集の、後半部と同じく、枯れた調子の歌が並んでいる。 ――降る雨は光あまねく充ちてゐる空をぬけきて木立をぬらす 水墨画のような、白黒の風景と、淡い光線、白くぼうっと輝く雲をおも…

『塚本邦雄歌集』

戦後短歌の有名な人の作品を集めたもの。細かいこと……『透明文法』、『水葬物語』、『装飾樂句(カデンツァ)』、『緑色研究』など。 「透明文法」…… 無風景の、言葉の奇抜な組み合わせを重視した歌が多い。春日井建のような情緒はない。旧字体が印象に残る…

『地上最強のアメリカ陸軍特殊部隊』三島瑞穂

第一部ではアフガン、イラクなど近年の事例を中心に特殊部隊の役割を解説し、第二部では著者の体験が語られる。アメリカとその自由主義への強烈な信仰が文の端々から垣間見える。善い悪いの問題ではなく、根底に強い信仰や忠誠がなければ、危険な特殊部隊の…

『下克上の時代』永原慶二

本書が扱うのは一四一六年、上杉禅秀の乱から一四八五年、山城の国一揆まで、将軍でいえば足利義持、義教、善政の時代である。室町幕府が下克上の機運のなかで崩壊していくさまを描くのが、この巻の目指すところである。 『日本の歴史』シリーズは古本屋で投…

『南北朝の動乱』佐藤進一

南北朝正閏問題は、現在からは考えられないほど神経質に扱われていた。斎藤実内閣のとき、中島商相が足利尊氏を評価した論文を発表したために、貴族院の菊池武夫らから叱責され辞職する事件がおこった。戦前においては南朝(吉野朝)が正統であり、北朝およ…