うちゅうてきなとりで

the cosmological fort 無職戦闘員による本メモ、創作、外国語の勉強その他

『腐敗と寛容 インドネシア・ビジネス』中原洋

 インドネシアでの経営経験がある人物が、当該国の文化、経済的慣習等について紹介する本。

 

 1 人と国

 インドネシアは多民族、多言語国家である。様々な民族間で共通するのは、楽天、寛容、忍耐の精神である。著者はこうした精神要素が生まれた背景として、豊かな自然資源、植民地としての歴史、独立後の経緯の3点を挙げる。

 オランダはインドネシアに対して過酷な収奪を行った。インドネシア人はこれに対し忍耐するしかなかった。また、独立後は異なる民族と文化を統合するために、あいまいな国家制度、法を採用せざるを得なかった。これが現在の寛容と自由につながったと著者は推測する。

 現状としては、インドネシアは個人所得が低く、半分近くの住民が貧困または飢餓の状態にある。政府及び公安機関は頼りにならず、無秩序な汚職がはびこっている。人びとは自分の身を自分で守るしかなく、犯罪や暴力が多発しても取締りは行われない。

 警察が機能しないため、住民は泥棒を自分たちで焼き殺し再発を防ぐ。

 スハルト独裁がなくなってからは、社会はより拝金主義的になった。

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 2 産業発展への課題

 インドネシアは汚職の国である。かつてはスハルトファミリーを頂点とした汚職体系がつくられていたが、現在は無秩序な汚職が広まっている。政治家、公務員、警察、税務署の汚職は特にひどく、また企業においても特に罪悪感もなくおこなわれている。

 ――……軍出身のある大臣は任命されてまもなく、配下の総局長、局長クラス70数名を解職し、新しく入れかえた。ところが新任者たちのほぼ半数は大臣の親族係累か同郷の出身者だった。……新聞にこれが報道されたとき大臣は、反対するなら自分のしかばねを乗り越えて行け、と発言した。

 汚職の原因は次の3つである。

 (1)貧困……国家予算が少なく公務員の給料が安い。給料と汚職の程度は反比例することが実証されている。トップは部下を食わさなければならないから不正な予算を取得する。公務員の数が異様に多いのは、スハルト時代、公務員からなる政党ゴルカルの基盤を盤石にするため彼が公務員を増員させたためである。

 (2)ゴトン・ロヨン(助けあい)精神……豊かな者が家族や貧しい者に恵みを与えるのは当然という風潮がある。

 汚職制度を富の再配分制度として正当化する論もあるが、これは誤りである。汚職による再配分はグループの者に限られるので、軍や一部のエリート、政治家周辺が富を蓄積する一方、恩恵にあずかれない階層は貧しいままだからである。

 (3)歴史的背景……ポルトガルやオランダはインドネシアにおいて積極的に私貿易を行い富を蓄積した。こうした歴史の積み重ねが現在の風土につながっている。

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 選ぶ道は外資導入による産業化か、もしくは自国の力による発展かのどちらかである。汚職については撤廃するには100年かかるため、汚職を活用し公平な再配分を可能にするシステムを考えてはどうかと提案する。

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 3

 インドネシア人は全体として穏やかだが時折感情を爆発させる。これをアモックという。人前で侮辱されたり、プライドを傷つけられたりした場合インドネシア人は暴れ出す。アモックを避けるためにかれらはスラマット(心の平静)を保とうとしている。

 8世紀までは、住民にはヒンドゥー教が根付いていた。その後、イスラム教が伝来し、以後は主流となった。インドネシアにおけるイスラム教多様性を認める傾向を持つ。もともと多神教ヒンドゥー教の強い土地にイスラムが根を張った理由として、イスラム商人の模範的な姿、しっかりした生活規範、道徳意識をあげている。

 債務大国であるため、海外諸国はインドネシアをなんとか延命させようと力を尽くしている。当のインドネシアはいまだに昔の生活習慣を保持しているからたとえ電気、水道、ガスが止められても平然と生き延びることができるだろう。

腐敗と寛容 インドネシア・ビジネス

腐敗と寛容 インドネシア・ビジネス