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『スティグリッツ入門経済学』スティグリッツ

 

 高校生むけの経済学入門書とのこと。

 第1章 経済学とニューエコノミー

 経済学は、社会のなかの組織がおこなう選択を研究する学問である。選択にまつわる五つの重要な概念がトレードオフ、インセンティブ、交換、情報、分配である。

 すべてのもの(時間、所得、商品など)は有限なのでわれわれは選択しなければならない。希少性scarcityこそがトレードオフを生む。インセンティブ(誘因)に意思決定者は反応する。人びとは自発的に交換することで便益を得、市場経済では交換によって効率的資源利用が実現される。意思決定者にとって情報は選択の重要な要素となる。市場は財とサービスの分配を決定する。

 主要な市場……product market, labor market, capital market.

 第2章 経済学的な考え方

 経済学は基本的競争モデルbasic competitive modelを用いて現実の経済を考える。このモデルによって表現される完全競争のもとでは、消費者は合理的で利己主義的であり、企業は合理的で利潤最大化をはかり、市場参加者はプライス・テイカー(価格受容者)である。

 インセンティブは価格、利潤、所有権を通じてもたらされる。価格は商品の希少性、消費者の評価を通知する。

「価格は、個人や企業が合理的な意思決定を行うために必要となる情報を提供してくれるのである」。

 そもそも利潤を得るためには所有権のともなう私有財産が必要である。

 インセンティブが大きくなるほど、不平等は大きくなる(誘因と平等のトレード・オフ)。インセンティブ、価格、利潤、所有権は経済が動くための根幹である。

 選択を経済学で分析するための最初の一歩は、利用可能な選択肢を定めること(機会集合opportunity set)を明確にすることである。たとえば予算の選択肢をグラフであらわしたのが予算線である。生産可能性をあらわした生産線は曲線である。これは、限界生産量が徐々に減るという収益逓減diminishing returnsの法則がはたらくためである。

 費用対便益、相対価格relative priceとは即ちトレード・オフである。選択したために失った(得られなかった)金と時間を機会費用opportunity costという。サンクコスト、限界費用は重要概念である。合理的選択の手順……機会集合を特定し、トレード・オフを明確にし、機会費用、サンクコスト、限界費用を考慮して、費用を正しく計算する。

 第3章 取引と貿易

 取引tradeは双方に利益をもたらすものである。払ってもよいとする額と、実際に払った額の差を余剰surplusという。通常国家間の貿易は2国間貿易bilateral tradeではなく多国間貿易multilateral tradeである。よって、たとえば日米のように一国との貿易が輸入超過していても、とくに問題にはならない(他国との取引で補えばよい)。

 自国の中で相対的に生産費用の少ない財、つまり比較優位の財を特化させて輸出すべきである。比較優位はnatural endowment, acquired endowment, 他に知識や特化の結果生まれる。保護主義の問題。

 第4章 需要・供給と価格

 需要曲線と供給曲線を重ねたときの交点を均衡価格equilibrium price, 均衡取引量equilibrium quantityという。均衡Equilibriumとは「もはや変化を引き起こす力が働かない状態」をさす。代替財と補完財、消費者余剰と生産者余剰。

 第5章 需要・供給分析の応用

 価格弾力性price elasticityとは、価格の変化にどれだけ需要が反応するかの値である。代替財の見つかる財や、奢侈品は一般に弾力性が高く、生活必需品や食料品(牛乳、肉など)は弾力性が低い。グラフが垂直に近くなるほど非弾力的であり、水平に近づくほど弾力的である。

 長期と短期で弾力性が様変わりすることもある。ふつう需要曲線、供給曲線ともに短期のほうが非弾力的になる。「短期の価格上昇は、長期において発生する産出量の増加をもたらす」。

 弾力性=生産物価格の1%の変化が引き起こす(需要/供給)量の百分比変化率。
需要と供給が均衡していないと過剰や不足がおこる。政府による上限価格規制や下限価格規制(price ceilings, price floors)は需要供給のバランスを崩してしまうことがあり、適切な政策にはなりえないという。

 第6章 不完全市場入門

 外部性や公共財、市場の失敗などは、現実の経済が競争モデルと異なる点である。不完全競争には独占monopoly, 寡占oligapoly, 独占的競争がある。

 重要な相違のひとつは、現実においては常に情報が不完全だという点である。また、企業の限界収入が商品の値段と一致せず、また企業はプライス・テイカーでもない。

 第7章 公共部門

 欧州諸国と異なりアメリカは所得格差の非常に大きい国である。不平等は社会や政治に問題を引き起こすことが多い。平等化を推進した東亜細亜と、政情不安定に悩まされるラテンアメリカがよい例にあげられる。しかし、勤勉と功績によって得た富は相続された富より美しいという考え方もある。

 価値財merit goodsとは、政府がマリファナや酒・たばこを規制したり、教育を奨励することをさす。これは消費者主権consumer sovereigntyに干渉するパターナリズム(父権主義)の例である。

 累進税progressive taxと逆進税regressive tax, 限界税率(限界はつねにmarginal)はインセンティブにかかわる。税制の評価基準……公平性、効率性、管理の簡素性、柔軟性、透明性。

 税金から逃れるために会計士が使われ、それに対抗して政府も税制を改革する。このため税制は複雑きわまりないものになる(アメリカの場合)。

 アメリカにおける年金制度について……若者層では年金制度が存続すると考える人より、UFOの存在を信じる人のほうが多い。

 第8章 マクロ経済学完全雇用

 マクロ経済の基本的目標は完全雇用、経済成長、物価安定である。

 インフレを考慮して名目GDPとは異なる実質GDPをだす必要がある。GDPは最終財を計上することで求められる。タイヤ、エンジン、ガラスといった中間財が組み合わさり、最後にトラックという最終財が完成する。中間財も含めてしまうと二重の計上になってしまう。GDP=消費+投資+政府支出+輸出-輸入である。

 労働市場では家計が労働を供給し、企業が労働を需要する。実質賃金が高くなると、インセンティブ効果によりもっと働こうとする一方、所得効果によって余暇を満喫しようとする。このバランスにより労働の供給曲線は垂直になる。
生産物市場では財の需要と供給が均衡するように調整され、資本市場では貯蓄と投資が近郊する必要がある。家計が消費にまわせる所得を可処分所得という。貯蓄は利子率にはそれほど反応しない。

 マクロ経済学において投資とは企業の資本財投資capital goods investmentsをさす。企業の投資は将来への期待と、実質利子率に影響される。実質利子率とは名目利子率からインフレ率を引いたものである。投資関数は実質利子率にたいする投資量を示す曲線である。

 一般均衡:総需要=消費+投資である。完全雇用産出量=完全雇用所得である。パソコン導入の例……まず労働者の限界生産性があがるため労働需要曲線が右にシフトし、均衡実質賃金があがる。生産性の上昇によって総供給曲線は右にシフトする。企業のパソコン購入により投資は増加し、貯蓄は所得増加の結果増加する。投資関数も貯蓄曲線も右方へシフトする。

 他国と貿易を行い、資金の賃借ができる経済を開放経済open economyという。

 第9章 経済成長

 生産性上昇の要因は、貯蓄と投資、労働力の質の改善、低生産性部門から高生産性部門への労働の再配分(農業からサービス業へ)、そして技術進歩である。
平均生活水準は一人当たり産出量に依存する。GDPの増加とともに、人口増加率も考慮に入れなければならない。高度の生産性を労働者に求めるうえで、教育が重要となる。

 前世紀の経済成長のほとんどは技術革新によるものである。技術革新、つまりアイデアは非競合的である。いったん発明されれば万人が用いられる。エジソンやベルの時代から遠く離れて、現在先進国やほとんどの大企業は研究開発research and developmentに投資している。ちなみにアメリカの研究開発投資の大部分は軍事目的である。

 第10章 失業とマクロ経済学

 総需要と総供給の推移から、東アジア危機を分析する。所得・支出分析から得られる総支出と総産出の乗数関係について。かなりふざけた読み方になってきたのでいずれマンキューで勉強しなおす必要がある。

 政府は雇用回復のために利子率を低下させたり(=投資の増加)、為替レートを下落させたり(=輸出促進と輸入削減)、支出増加させたり減税させたりして経済の回復を促進する。

 第11章 インフレーションデフレーション

 失業とインフレはトレードオフの関係にある。将来のインフレに備えて賃金や収益をインフレにリンクさせることをインデックス化、物価スライド、indexationなどという。しかしこれは完璧にはならないため、インフレを避けるため種々の対策がとられることになる。インフレでもっとも被害をうけるのは貸し手、納税者、貨幣保有者である。

 長期の完全雇用モデルでは価格と賃金は伸縮的であり、短期の不完全雇用モデルでは価格と賃金は硬直的である。インフレと失業の関係を考えるにあたりこの二モデルの中間の状況を理解する必要がある。

 労働市場などでの需要供給のギャップが(需要過剰が)価格上昇につながる。失業率とインフレの関係を示すものにフィリップス曲線というものがある。クルーグマンの本にあったNAIRU, non-accelerating inflation rate of unemployment. インフレ率低下のためにはNAIRUを上回る水準に失業率を維持しなければならない。

 政府がマネー・サプライ(貨幣供給量)を増加させ、それを見越して企業・労働者が物価上昇を期待することを合理的期待という。これに重きを置くのがマネタリストである。

 現在多くの中央銀行マネタリズムではなく、インフレターゲティングにしたがっている。

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 補論より、課税の種類……納税者と税負担者が一致するものを直接税direct tax(所得税法人税など)といい、そうでない物品税や消費税などを間接税indirect taxという。人頭税など経済活動水準に依存しないものを一括税lumpsum taxという。

 経済活動水準とともに額の変わる税は、財の取引数量に応じてかわる従量税specific taxと、取引価値額に対する税額の割合を一定比率に定める従価税ad valorem taxに分けられる。

 

スティグリッツ入門経済学 第4版

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