Viktor Suvorovは元ソ連軍参謀本部情報総局所属の軍人で、イギリスに亡命後、様々な暴露本を書いた。
どれも非常に面白く、また元自〇隊員としては共通点や違いを探し出すのも面白い。
ソ連解体後も、軍や情報機関は基本的に中身が変わらないので、現在に通じる点もある。
ほとんど古本でしか流通していないが、今読んでも大いに価値があると考える。
Spetsnaz: The Inside Story of the Soviet Special Forces
- 作者:Suvorov, Viktor
- 発売日: 1988/09/01
- メディア: ペーパーバック
『Inside Soviet Military Intelligence』は、GRUの活動について説明する本である。
有名なKGBは、基本的にソ連市民を抑圧し亡命者や裏切り者を取り締まるために存在する。一方、ロシア軍付属のGRUは、軍事情報取得等、あくまで軍の機能として諜報活動を行う。
ソ連情報員たちの、協力者に対する扱いは、複数の暴露本などで書かれているとおりである。
表向き友好だが、最も嫌われているのは、ソ連友好団体である。
わたしが言っているのは外国に存在するソ連友好団体の多数のメンバーである。建前ではソ連代表はこうした寄生虫を友好的に取り扱うが、陰ではかれらを「糞食い(Shit Eaters, Govnoed)」と呼んでいる。
GRU・KGBの将校ともに、「糞食い」たちよりも工作員に対して敬意を払う。かれら工作員の動機はわかりやすい――安楽な生活と金である。
しかし、ソ連友好団体の友人たちの行動は、ソ連市民にとってはまったく理解しがたいものである。
……これらソ連の友人たちは、ジレットカミソリに始まる文明の恩恵を享受し、いつでもほしいものを店で買い、バナナでさえいつでも買うことができるにも関わらず、ソ連を賞賛するのである。ソビエト情報機関にとっては、こうした人びとは糞食い以外の何物でもない。
GRU将校の大半は、ソ連市民と同じく、共産主義を憎悪していたという。
GRUになった瞬間、かれは共産主義下で大きな特権を手に入れる。
共産主義では、市民は命じられた場所で生きなければならない。地方で生まれた人間は一生地方で生活し、その子孫もみな地方で過ごす。しかし、GRUになると、モスクワで生活する資格を与えられ、さらに一般人は一生実現できないマイホームやマイカーを手に入れることもできる。さらに海外生活も送ることができる。
モスクワには、外国人あるいはGRU等特権階級しか入れない店がたくさんある。一般人は外貨を持つことを許されていないからである。
GRU軍人になれれば、その子供、孫もモスクワで生活できるし、社会的な上流階級への道も開かれる。こうした特権を失わないためなら、敵国人やライバル相手にどんなことでもするようになる。
ソ連スパイには、現地協力者をリクルートする厳しいノルマがあり、それも国ごとに要求が違う。
不人気なのは東京である。日本にはスパイ取り締まり法案がないため、大量の工作員を雇うことを要求される。よって、毎日、休みなく長時間労働を強いられる。
ソ連は力のみを信じる国だった。
英国は同時に105人(KGBとGRUの全構成員)を追放したが、報復はなかった。もしソ連スパイに対し似たような行動をとれば、モスクワにいるあなたの国の外交官は安全であるに違いない。あなたの国の外交官は大いに尊重され、ソ連は関係改善を求めてくるだろう。
ソ連指導者は力を理解し認める。しかし、認めるのは力だけであり、他はいっさい認めない。
ソ連はどのような国の主権も、地図上ではどんなにちっぽけな国の主権も尊重することができる。ただし尊重するのは、自らの主権を尊重し守ろうとする国だけである。