うちゅうてきなとりで

The Cosmological Fort 無職戦闘員による本メモ、創作、外国語の勉強その他

『グアテマラ虐殺の記憶』 その2 ――グアテマラ内戦に関する数少ない日本語の本

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 ゲリラとの戦いにおいて、軍はゲリラ浸透度合いで地域をゾーン化し、対策した。住民の大量拘留、移動制限、モデル村構築によるゲリラ拠点の無力化が行われた。軍は、様々な学問を利用し、また人種偏見に基づいて先住民族に対応した。

 軍は、ゲリラ蔑視、虐殺の正当化を通して、先住民族が「軍による赦し」を望むように教化した。

 

 モデル村の目的……

・反抗的住民を中和・打倒

・相互監視

・罰と恐怖、社会的分断を通じて軍への感謝の念を植え付ける

・軍に忠誠を尽くす地元権力の構築

 

 PAC(自警団)はリオス・モント将軍政権樹立後に大量組織化された。

 軍は住民から徴募されたPACの忠誠を完全には信じておらず、信頼度に応じて武器を与えた。PACは村の警備や軍の先導役(真っ先に攻撃や地雷の標的となった)、無差別の虐殺、略奪などをおこなった。

 

 

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 なぜこのような残虐行為が可能となったのか、その原因を追究する。

 

・軍の兵士は大半が下層階級のマヤ系住民であり、将校団はラディーノ(メスティーソ)だった。兵たちは非人道的な訓練を通して人間性を喪失していった。

・研修と称して300匹の犬を殺し茹でた血をコップ1杯飲まされた。昼飯が犬鍋だった。

・部隊の評価や昇進のためには残虐行為が不可欠だった。残虐行為なしに軍での出世は望めなかった。

・監視、誘拐、拷問殴打、殺害と、徐々に心理的抵抗を弱め、苦痛に無関心になるような教育が行われた。

 

 ――セナウー村について将校やG2を探したんだが、見つからなかった。すると怒鳴り声が飛んできて、「急げ、お楽しみが終わっちまうぞ」ていうんだ。そこにいくと、若者たちの頭を切断している最中で、あとひとりしか残ってなかった。これがお楽しみってわけだった。

 

・口の軽い情報メンバーや統制を外れた者は仲間内で抹殺された。

・80年代前半に多く発生した集団虐殺は、焦土作戦の意図に基づき計画的に行われた。ゲリラ側による虐殺も件数ははるかに少ないが記録されている。

 

・虐殺や拘留には拷問が伴った……四肢切断、殴打、性暴力、極限状況での拘留、自らの手で墓穴を掘るなど。

 

 ――その部屋には天井から板がつるされていました。磔をみたことがありますか。そこには、磔になったキリストのようなひとりの男が、いえひとりの男らしいものが打ち付けられていました。わたしの人生で見たもっとも恐ろしい光景でした。それはもう人間の体をなしていませんでした。体にウジがはい回っており、歯はなく、髪もなく、顔の形もわからなくなった男がつるされていたのです。……司法警察のひとりが、小さな斧を持って入ってきました。コーヒー豆を刈るときに使うような小さな斧で、真っ赤に焼けていました。その男の人のペニスをつかむと斧で切り落としたのです。すさまじい悲鳴が上がりました。あの悲鳴は決して忘れることができません。

 

・脅迫や情報収集目的の拉致、また強制失踪

・情報部は政治活動を理由に対象者のリストを作り暗殺した。また、手に入れた情報を活用し学生組織や労働組合にスパイとして浸透した。

・拷問により転向したカトリック聖職者ペジェセルは後に政府の情報関連顧問として弾圧に加担した。

 

・秘密墓地

 

 ――穴に入るように膝から下を折り曲げて、ガソリンをふりかけたんだけど、火の手は2、3メートルにも達したんだ。火の中から、まだ息のある連中のうめき声や泣き声、叫び声が聞こえてた。

 


 3部

 

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 人々が残虐行為に対しどのように立ち向かったかについて。

 

・避難・亡命

・「抵抗の共同体」はイシュカン地方、イシル地方の山中に逃れて生き延びた。当初はゲリラの支援を受けていたが、やがて独立し共同体・行政機構を築いた。

・女性は、男性と同様に殺害されるだけでなく、性暴力の対象にもされた。

 

 ――兵士らはマチェーテでうちの息子の首を切り取り、そのあとで下の息子の首も切り落としたのです。

 

 ――殺す前に、十字架をつくってその女をはりつけ、大きな釘をその手と乳房に打ち付けました。それから家の中に運び込み、火をつけたのです。十字架に釘付けにされたまま焼かれたのです。子供もそばにいましたが、その子も焼かれていました、ひどく焼かれていました。

 

 

 2

 

 3

 

 こうした内戦を繰り返さないためには、人権を基礎として社会を再建することが不可欠である。

 

 ――民衆組織をつくり、人として自分たちがどんな権利を持っているのか、そして何をすべきなのか知ることです。そして恐れを捨てることです。恐れこそがわたしたちの力をそぐものですから。

 

 軍や軍務委員、その取り巻きがいまだに社会的に高い地位にあり権力を保持しており、正義が実現されていないため、残虐行為の再発を招きかねない。

 軍はまだ力を持ち、免責、不処罰、汚職や不正が横行している。軍の規模を縮小し、社会の非軍事化を進める必要がある。

 

 本書(真相究明委員会)の改革案は次のとおりである。

 

・非軍事化

 縮小、改革、情報機関が収集した情報に対する開示請求制度

・PACの解体

良心的兵役拒否、徴兵廃止

・自由の享受

・土地問題

 土地の不平等をいかに改善していくか。

 

 おわり

 

グアテマラ虐殺の記憶―真実と和解を求めて

グアテマラ虐殺の記憶―真実と和解を求めて

  • 発売日: 2000/10/27
  • メディア: 単行本