レビーの『暗号化』は非常に面白かった。
わたしたちが現在使っているネットショッピングやカード利用、ATM、その他インターネットの大部分は、暗号によって通信を保護することで成立している。
この暗号は、かつて政府や軍しか使うことができなかった。
民間や学術機関で暗号を研究することは非常に困難だった。アメリカ政府が暗号関係論文を機密指定し、だれかが暗号を開発した場合、これを機密指定して公表を禁じたからである。
かれらが圧力や検閲や逮捕を恐れて研究をやめていれば、今日ATMでお金を引き出すことやAmazonで買い物すること、電子メールで仕事をすることも不可能だっただろう。
本書は、暗号に関する情報統制や封殺と戦った民間暗号学者・アマチュア暗号発明家たちの努力を描くものである。
現在、中国ファーウェイ製品やTikTok、ロシア製アプリによる情報収集が問題になっているが、こうした国々が掲げる目的はアメリカと同一である。
クリントン政権は、政府による通信復号化を可能にするチップを、民間PCに搭載しようとしたが、反発にあいとん挫した(クリッパーチップ)。
その後、IT企業・通信事業者と提携し、直接傍受する政策を推進した。
本書での教訓:
・秘密にしていることはいずれ暴露される。
・暗号学者を国家機関で囲い込む閉鎖的な研究環境(NSAやGCHQ)ではなく、民間人・学者が開かれた場で共同研究を行う環境が技術的・政治的な勝利を手に入れることもある。
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