◆文語訳聖書
正月から文語訳聖書を読んでいます。これまで引用などで知っていた箇所はありましたが創世記から読むと面白い挿話がたくさんあります。
旧約聖書の神であるエホバは非常に厳しく残酷で、神を奉じるイスラエルの民や預言者も、ジェノサイドや略奪を頻繁に行います。
都度、インターネットで挿話を調べていますが、このような殺戮・略奪行為をそのとおりに解釈する見方と、隠喩として解釈する見方とがあるようです。
創世記34章:
ハモルの子シケムに妹のデナを凌辱されたシメオン、レビは、デナに求婚するシケムに対し、一族の男が皆割礼すれば家族として迎えるという。シケムらが割礼し弱っているすきに、シメオンとレビたちは一族を虐殺し、掠奪した。
――かくて三日におよびかれらその痛みをおぼゆるときヤコブの子二人すなわちデナの兄弟なるシメオンとレビ各々剣をとりゆきておもいよらざるときに邑(まち)を襲い男子をことごとく殺し/刃をもてハモルとその子シケムをころしシケムの家よりデナを携えいでたり……これかれらがその妹を汚したるによりてなり/またその羊と牛とロバおよびその邑にある者と野にある者/ならびにその諸々のたからを奪いその子女と妻らをことごとく虜にし家の中の物をことごとく掠めたり
モーセによる虐殺:
神からの命令下達の後、山を下りてきたモーセは、人びとが偶像である「仔牛」(金の子牛,Golden Calf)と「舞踏」に興じているのを見て激怒する。かれは怒りで石板を砕いて水に溶かしてその人びとに飲ませた。そして、レビの子孫に命じて、不信心者3000人を皆殺しにした。
――……イスラエルの神エホバかくいいたまう汝らおのおの剣を横たえて門より門と営のうちをそこここに行き巡りて各々その兄弟を殺し各々その伴侶を殺し各々その隣人を殺すべしと
――レビの子孫すなわちモーセのことばのごとくになしたればその日民およそ三千人殺されたり
このモーセ激怒の下りを読んで、ホドロフスキーの映画を連想しました。
列王記:
預言者エリシヤは、自分をハゲ頭とからかってきた子供たちに死の制裁をおこなった。子供たち42人は熊に引き裂かれて死んだ。
このエピソードはWikipediaによると非常に有名らしいですがわたしは知りませんでした。エリシヤは非常に厳しい預言者です。
――……小童ども町よりいでてかれをあざけりかれにむかいて禿げ頭よのぼれ禿げ頭よのぼれといいければ かれふりかえりてかれらをみエホバの名をもてかれらを呪いければ林のうちより二つの牝熊いでてその子供らのうち42人をさきたり
約2か月かかりましたがとても面白い本でした。
反セム主義の歴史、帝国主義の歴史、そして全体主義の3部から成り、20世紀の独ソ全体主義とホロコーストの原因を探究します。
本書ではホロコーストを招いた遠因の1つとして、難民問題が挙げられています。移民・難民問題から排外主義が勃興していく流れは現代にも通じるものがあると考えます。
・第1次大戦終結後、小さな民族国家が多数誕生し、約1億人の旧オーストリア=ハンガリー帝国人民のうち3割が、各国民国家においてマイノリティとなった。
・新興国民国家では、列強では当然視されていたマイノリティ(非・国民)の基本的人権が存在しなかった。
・フランス人権宣言は人類の歴史を変えた。人権は人間そのものに由来し、政府や王権から自由であることが共通認識となった。しかし、政府のない人びとの人権がどのように保障されるかは定かではなかった。
・20世紀におこったのは、追放された人びとの逃れる先が、地理的にではなく政治的にもはや存在しないということだった。18世紀の思想において、神や自然法に由来するとされた人権は、国家の庇護の下に保障されるものでしかないことが明らかになった。
それが、難民が人権を奪われ、またユダヤ人がイスラエル建国を行った理由だった。
・問題になっているのは、人権の源泉としての神や自然法が否定され、政治的な位置づけの喪失がすなわち人権の喪失を意味するようになった近代社会である。
それはあらゆる領域が政治化された世界、グローバルな世界においてのみ見られる現象である。
The Origins of Totalitarianism (Harvest Book, Hb244)
- 作者: Hannah Arendt
- 出版社/メーカー: Mariner Books
- 発売日: 1973/03/01
- メディア: ペーパーバック
- クリック: 8回
- この商品を含むブログ (17件) を見る
◆来月の買い物
Lenin's Tomb: The Last Days of the Soviet Empire
- 作者: David Remnick
- 出版社/メーカー: Vintage
- 発売日: 1994/04/26
- メディア: ペーパーバック
- この商品を含むブログを見る
ソ連末期について 書かれた本です(邦訳あり)。
Letters from Russia (New York Review Books Classics) (English Edition)
- 作者: Astolphe de Custine
- 出版社/メーカー: NYRB Classics
- 発売日: 2012/04/25
- メディア: Kindle版
- この商品を含むブログを見る
19世紀にロシア帝国を訪れたフランス人の紀行文です。ロシア帝国の秘密警察や、宮廷の様子が、ソ連に酷似しているということで昔よく取り上げられていたようです。
Tent Life in Siberia: An Incredible Account of Siberian Adventure, Travel, and Survival
- 作者: George Kennan,Larry McMurtry
- 出版社/メーカー: Skyhorse Publishing
- 発売日: 2007/03/17
- メディア: ペーパーバック
- この商品を含むブログを見る
19世紀にシベリアを探検したアメリカ人の旅行記です。冷戦初期に封じ込め理論等を提唱した外交官ジョージ・ケナンの大叔父にあたります。
なぜロシア関連の本に興味をもったのか? 理由は以下のとおりです。
・ポーランド人の独立運動家オッセンドウスキによるロシア内戦体験記・モンゴル旅行記である「Beasts, Men and Gods」を読んで、極東ロシアの様子を知りたくなった。
Beasts, Men and Gods (English Edition)
- 作者: Ferdinand Ossendowski
- 発売日: 2012/05/17
- メディア: Kindle版
- この商品を含むブログを見る
・ソ連末期を調べることで今後の生き方の参考になるのではないかと感じた。