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The Cosmological Fort 無職戦闘員による本メモ、創作、外国語の勉強その他

『陸軍登戸研究所の真実』伴繁雄 その2

 植物、作物に対する病原菌兵器の開発が行われ、大陸で実験された。しかし結果は不明確である。

 風船爆弾に牛の病原菌兵器を搭載し米本土を攻撃する計画もあったが、中止になった。

 

 電波兵器(1科)

 怪力光線、殺人光線ともいわれる「く」号は、怪力電波によって兵器に損耗を与え敵兵を殺傷する決戦兵器として開発されていたが結局実用されなかった。

 その他、探知レーダー(「ち」号)の開発も進められたが、欧米に大きく後れをとった。

 陸軍の電波兵器開発には、八木アンテナ八木秀次理研仁科芳雄、NHKの高柳健次郎ら優秀な部外者が顧問に就いていた。

 

 ――研究のスタートは同じ、周辺技術も大差はなかったと思われるが、日本は方式の採用と周波数の選定を誤ってしまった。

 

 風船爆弾(1科)

 風船爆弾による米本土攻撃である「ふ」号作戦は、昭和19年に開始された。この年は戦艦武蔵が沈没し、また第1航空艦隊司令長官大西中将の命により神風特別攻撃隊が活動を開始していた。

 こんにゃく製の気球を用いた爆弾を米大陸まで8000kmかけて飛ばすのは困難だったという。

 「ふ」号作戦のための部隊は約3大隊規模であり、本部、通信隊、気象隊、材料廠、試射隊、標定隊からなる。

 以下、参謀総長による攻撃準備命令及び攻撃命令の引用。

 

 ――気球聯隊ハ主力ヲ以テ大津、勿来付近ニ一部ヲ以テ一宮、岩沼、茂原及ビ古間木付近ニ陣地ヲ占領シ概ネ十月末迄ニ攻撃準備ヲ完了スベシ

 ――米国内部攪乱ノ目的ヲ以テ米国本土ニ対シ特殊攻撃ヲ実施セントス

 

 対支経済謀略としての贋札工作(3科)

 国民政府の通貨「法幣」を偽造することで経済を破壊し、また現地の調達に寄与することが目的だった。工作は有効だったが、一方で国民政府はこの贋札を逆用しインフレ防止に役立たせたという。

 

 ――戦後、しばらくの間、チ―三七号事件など千円札の偽造事件やパスポート、身分証明書等の偽造事件が起きると、製造が登戸研究所の元所員ではないかと疑いをかけられ、マスコミでもたびたび捜査の対象としてとりざたされたことがあった。

 

 研究所では度々爆発事故やガス、劇薬等による事故が起こり、所員や軍人が焼け死んだり粉々になったりしたという。

 

 3 秘密戦の実相

 著者は秘密戦の器材送達や教育のため、前線へ出張している。

 関東軍情報部(ハルビン機関)は主に対ソ情報収集を任務としていたが、ソ連の防諜態勢は強固であり浸透は困難だった。南方軍参加のF機関(藤原機関)はインド独立工作のためインド人と交渉していた。

 その他、蘭領インドネシア、フィリピン等で、中野学校出身者を中心に秘密戦活動が行われていた。

 昭和18年、ガダルカナル島撤退や山本五十六の墜落死等戦況が悪化してくると、中野学校は従来の諜報工作から遊撃戦要員の養成に重点を移した。

 敗戦直前に研究所は各科ごと地方に疎開し、降伏後恒例の証拠隠滅作業が行われた。

 

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 731部隊は有名だが、他に動物家畜用生物兵器研究を任務とする100部隊というのもあったようだ。

 

陸軍登戸研究所の真実

陸軍登戸研究所の真実