ヒンドゥー教について説明する本であり、素人にもわかりやすかった。
ヒンドゥー教は一神教や仏教から見ても異質な面がある。しかし、ヒンドゥーの神々、儀礼、思想等は、日本にも受け継がれている。
七福神の半数はヒンドゥーの神々由来であり、輪廻(サンサーラ)や業(カルマ)の概念もヒンドゥーが発祥である。
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ヒンドゥー教は、インド人口の8割を信徒とする宗教であり、かれらの生活の中枢となるものである。ヒンドゥー教は人びとの考え方、生活、組織、社会を強く規定するものである。
信仰様式は多岐にわたり、また神々も多様である。ここでは、おぞましい女神カーリーを祀るカーリガート寺院における生贄の儀式、ホーリー祭り等が取り上げられている。
――ヒンドゥー教は、キリスト教やイスラーム教のように宗教を貫く教義・信条が信仰を導くのではなく、……なによりも信仰がすべてに優先します。言いかえると、信仰が教義や信条をいかようにも自在に解釈していきます。ですから問題は尊師(グル)です。
ヒンドゥー教は何でもありの宗教であるという。
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ヒンドゥー教は永遠の相を重視するため、これまで歴史的記録がほとんど残されてこなかった。その起源は、インダス文明、アーリア人、『リグ・ヴェーダ』とたどることができる。
『リグ・ヴェーダ』の信仰はバラモン教に姿を変えたが、ヒンドゥー教の発展を通して、生贄や火(アグニ)信仰等、古い形式や信仰がそのまま残っていることが多い。
紀元前2~5世紀の『マヌ法典』には食事制限への言及はない。アヒンサー(不殺生)の教えはジャイナ教、仏教に由来するからである。
シヴァ、ヴィシュヌ、ブラフマーといった神々の物語『ラーマーヤナ』、『マハーバーラタ』はいまでも広く知られており、神々への信仰も継続している。
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アーリア人はインドを征服すると「ヴァルナ」(肌の色、色)制度を定めた。肌の白いアーリア人に対して、卑しい存在として原住民を奴隷の地位に落とした。これがカースト制度の原型である。
バラモンは司祭として身分制度の頂点に立った。かれらには職業選択の自由があるが、祭祀はバラモンでなければできなかった。
かれらの多数が、徳性も知性もない俗物であった一方、知識と哲学を重んじる文化は現代にまで継承された、とネルーは書く。
一般的に、自分より低カーストの者の手による料理を嫌うことから、料理人になるバラモンも多かった。
4つのヴァルナは、肌の白いバラモン、クシャトリヤ、ヴァイシャと、肌の黒い先住民であるシュードラからなる。
さらに職能別に分化した世襲身分がジャーティである。
不可触選民は、身分差のある婚姻に関わった者や、血、屍体、肉に触れる職業の者等からなり、「アウトカースト」、「アンタッチャブル」とも呼ばれ、カースト制度から除外されている。
[つづく]