アラブ世界に共通するアラブ思想の袋小路について。
1967年、第3次中東戦争の敗北により、パレスチナがイスラエルに占領された。
以後、マルクス主義過激派とイスラーム主義が勃興し、双方ともテロと暴力の温床となった。
現代のイスラーム主義は、終末論に陰謀論とオカルト思想が混交している。アラブ諸国の書店や露店には、安っぽい陰謀論の本があふれかえっているが、かれらはこうした書籍を真面目なものと受け止める。
世界の終末がやってきて、偽預言者ダッジャールたるアメリカとイスラエルが、またUFOと宇宙人が、人びとをだましおとしいれようとする、といった荒唐無稽な言説が、一般市民のみならず知識人や政治家、エリート層に間にまで広くいきわたっている。
そこには、アラブ世界の問題はすべて外部の敵が原因だとする思考回路が垣間見える。
アラブ諸国の政治家や官僚には、アラブ現実主義とでもいうべき実際的な思考の持ち主もいるが、かれらの政治に一般市民は参加できない状況である。
結果、市民は過激なイスラーム主義や陰謀論、終末思想にはまっていく。
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セム教は元々、終末論と関係が深い。
ユダヤ教は、真の救世主が来るまでに、偽の救世主やどちらともつかない救世主が無数に出現するだろう、と唱えることで、終末を引き延ばしている。
キリスト教は、イエスが生まれたことで救世主が現れたが、さらにイエスが再臨するまでに間がある。
イスラームは、原始的な終末思想を今も色濃く残している。来世は物質的、精神的、性的満足を満たす楽園として描かれる。一方、地獄はあらゆる苦痛を伴う世界である。
こうしたイメージをイスラームは想起させる。
終末を彩るものたち……偽預言者ダッジャール、ヤージュージュとマージュージュ(ゴグとマゴグ)、終末の獣等。