歴史、神話、アラビアの哲学や神学を題材にしたボルヘスの短編集。
古代ローマ、中世と舞台は様々である。「円環」と紹介されている通り、無限、時間の繰り返し、ループを適用された話が多い。
「不死の人」は、古代の旅人が不死の人びとを発見し、自らも不死の体験をする話。
「タデオ・イシドロ・クルスの~」では、主人公の過去が反復される。
「アステリオーンの家」、「二人の王と二つの迷宮」、「エル・アレフ」では、現実に無限回廊や無限迷路、全宇宙を凝縮した特異な一点が登場する。
ボルヘスは南米の無法者と遊牧民たち、ガウチョたちにも関心を持ち続けた。
「死んだ男」は典型的な悪党の話。
「神学者」は古代のキリスト教宗派を巡る争いの話だが、最後はドッペルゲンガーを連想させる。
歴史、古典からの引用が多く、話の展開も百科事典のように圧縮されている。それは参考になるが、退屈な話もある。
ボルヘスの作品では「トレーン、ウクバール、~」や「バベルの図書館」、「バビロニアのくじ」等、哲学的なパズルを取り入れたような話が一番気に入っている。
この本ではそうした作はあまり見られない。
- 作者: ホルヘ・ルイスボルヘス,Jorge Luis Borges,木村榮一
- 出版社/メーカー: 平凡社
- 発売日: 2005/09
- メディア: 単行本
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