イラク戦争における市街戦について簡単に解説する本。
白黒の写真とイラストがついており、市街戦の基礎的な事項が理解できる。1つ1つの項目における説明はあっさりしているが、全体の印象としてはおぞましいゲリラ戦、近接戦闘の風景が浮かび上がる。
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1 市街戦の基本
・都市は複雑な要素の混合である。
・交通量
・多様な人びと
・大規模戦闘指向、野戦指向、過度の権限集中が役に立たない
・小規模ユニットと歩兵がかぎを握る
・情報活動が重要である(偵察ドローン等)
・ビル、アパート、壁により状況が分裂している
・兵隊は市街に浸透することで孤立する
・近接戦闘と、死傷者の増加、疲労の蓄積
・インフラ(建造物、エネルギー、金融等)への損害と復旧が重大な要素である。インフラの防護
・町をがれきにすることは敵を利する
・モスク、宗教の要素
・砂嵐
・都市の周りには郊外があり、反乱分子は自在に移動する
反乱分子の戦術
・分散化された反乱分子のネットワーク
・非伝統的な戦術
・AK‐47、機関銃、RPG、榴弾砲、SA‐7(対空ミサイル)
・遠隔起爆システム、自動車爆弾
・仕掛け爆弾による「柔らかい」ターゲットへの攻撃(警察、国際機関、赤十字等)
・自爆テロ
・公共車両へのなりすまし
・砲弾の活用
・IED、発展形であるEFP(自己鍛造弾)、地雷
・待ち伏せ、公共施設への武器の隠ぺい
・ミニバン
・労働者、治安機関、民間軍事会社、民兵へのなりすまし、文化規範の利用(顔を覆う衣服など)、街路での監視、偵察、モスクの活用
・デモの活用、誘拐、
・都市におけるテロを主導するザルカウィ、ビンラディン等国際的ジハーディスト
・爆弾製作者は、高位の賞金首になる。
2 人びと:かぎとなる地勢
・通訳
・メディアの重要性
・情報・宣伝戦
・人びとの支持を得ることが重要である。本書では、イラク人は個人主義的であり、個人同士の信頼が政治的・宗教的な障壁を容易に乗り越えることがあると書かれている。
・チェックポイント、軍用犬、身分証チェック、女性を検索するための女性兵士、女性職員
・ファルージャの戦闘では、事前の強制避難を実施した。しかし、不完全であり、また避難を拒否する市民もいた。米軍とイラク軍は、ファルージャに残っている人間はすべて反政府勢力だとして攻撃をおこなった。
・家の捜索、勾留者
・反政府勢力の目的は、米軍や治安部隊の問題行為を引き起こし政府の正統性を失わせることにある。また、市民を標的としたテロを行い、治安を悪化させることも、政府の正統性を減少させる。
3 戦争の兵器
市街戦では、使用できる兵器に制限がある。高強度の兵器、インフラに損害を与える兵器、取り回しに不便な兵器を使う場は限定される。
・M16とM4、軽機関銃、散弾銃、けん銃、グレネードランチャー、クレイモア、
・狙撃手
・重機関銃、間接火力システム
・主力戦車main battle tank, 車輪戦闘装甲車、機動戦闘装甲車、ハンヴィー、クーガー、
・警察車両、改造トラック、NTSV(nonstandard tactical vehicle)
4 都市における航空機
・AC‐130ガンシップ、攻撃機、アパッチ、カイオワ、リトルバード、MEDEVAC、着陸地点の選定、ロープによる潜入、ヘリコプターによる脱出、対空待ち伏せ攻撃のリスク
5 近接戦闘
・3次元の世界
・環境の急変(開けた場所と閉鎖空間)
・ボディアーマー、通信手段、閃光弾、武器のカモフラージュ、ハンドライト
・殺人領域:道路、交差点、扉の前、廊下、窓から見えるところ、階段
・建物を登る、柵や壁を超える、上方は有利な位置、屋上での位置取り、扉や塀の突破、
・反政府勢力がナイトビジョンを持たないため、米軍は夜間攻撃を活用する。
・空や壁を背に立ってしまうと、敵の標的になる
・狙撃手の役割、鍵穴から狙って撃つ
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low intensity conflict 低強度紛争
EFP explosively formed penetrator 自己鍛造弾
Urban Warfare in Iraq 2003-2006
- 作者: J. Stevens
- 出版社/メーカー: Spartan Submissions Inc
- 発売日: 2006/07
- メディア: ペーパーバック
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