制作:2012年
アイヒマン裁判についての文章を発表した哲学者が世間の攻撃にさらされるが、自分の確信を曲げずに貫く様子を描く。
人間の悪の正体を見極め、また思考不能、思考停止こそが人間を悪と残虐行為に駆り立てることを訴える。
実在人物の伝記映画であり、起伏はあまりないが、最後の演説は迫力がある。ただし、事前にアーレントの概要を知っていないとなかなか映画に入りこむのが難しいようだ。
◆メモ
2つの敵
「ハンナ・アレント」において、ユダヤ人指導者がナチスドイツに協力していた事実を指摘したアレントは、同朋から非難される。アレントの主張は、敵味方の明快な区分けを崩すものだからである。
自分の身内に敵がいた国は不幸である。
敵国のみならず、利己的で非合理的な軍やエスタブリッシュメントに苦しめられた国もある。
身内の組織や既得権益者にいじめられ、さらに、自ら組織に服従して他国に有害行為をなしたというのが失敗の歴史である。