本書の目的:日中戦争・太平洋戦争における日本軍の作戦失敗例からその組織的欠陥や特性を析出し、組織としての日本軍の失敗にこめられたメッセージを現代的に解読すること。
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1 ノモンハン
作戦目的があいまい、中央と現地との連携不足、情報不足、精神主義
2 ミッドウェー
二重の作戦目的、不測事態に対する柔軟性の欠如
3 ガダルカナル
情報不足、戦力逐次投入、米軍の新戦略への対応不可、陸海軍の協調失敗
4 インパール
不用な作戦が却下されることなく実行された、情緒や組織内の融和を重視するシステム
5 レイテ
統一指揮の不在、各参加者の任務の認識不足、高度の平凡性の欠如
6 沖縄
作戦目的があいまい、意思統一失敗
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共通事項
作戦目的のあいまいさ、大戦略の不在、短期決戦重視(情報、後方軽視、戦力逐次投入)、情緒や空気が支配する意志決定、論理実証主義の欠如、アンバランスな技術体系、組織の和と政治を優先する人事、失敗から学習しない組織、結果よりもプロセスや姿勢を重視。
虚ろな作文……「神機まさに熟せり」「決死任務を遂行し、聖旨に添うべし」「天佑神助」「神明の加護」「能否を超越し国運を賭して断行すべし」
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日本軍の環境不適応の根源が何かを考える。戦略、資源、組織といった組織論の枠組みから日本軍の特性を分析している。
著者によれば日本軍は適応しすぎて適応不能に陥っていた。陸軍は銃剣突撃主義、海軍は艦隊決戦主義を原理原則とし、以後の状況の変化によって自らを変えることができなかった。
――日本軍は、逆説的ではあるが、きわめて安定的な組織だったのではなかろうか。「彼らは思索せず、読書せず、上級者となるに従って反駁する人もなく、批判を受ける機会もなく、式場の御神体となり、権威の偶像となって温室の裡に保護された。永き平和時代には上官の一言一句はなんらの抵抗を受けず実現しても、いったん戦場となれば敵軍の意思は最後の段階まで実力を以て抗争することになるのである。政治家が政権を争い、事業家が同業者と勝敗を競うような闘争的訓練は全然与えられていなかった」。
――仕事は決まったことの繰り返し、長老は頭の上に載せておく帽子代わりでよい、というのは平和時代のことである。
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- 作者: 戸部良一,寺本義也,鎌田伸一,杉之尾孝生,村井友秀,野中郁次郎
- 出版社/メーカー: 中央公論社
- 発売日: 1991/08
- メディア: 文庫
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