奇妙な登場人物と不条理な軍隊を題材にした戦争小説。戦争を題材にしたフィクションの中でも記憶に残る作の1つである。
兵隊たちは責任出撃回数を終えても帰国できないため必死で任務をさぼろうと奮闘する。一方、異常な指揮官たちはかれらに非人間的な爆撃任務を課す。
ヨッサリアンの友人ダニーカ医師は「非常にあたたかく、情に厚い男であったから、自分自身に同情することを決してやめなかった」。
「一ヶ月に八時間のスキート射撃は彼らにとってこの上ない訓練であった。それは彼らにスキートを撃つよい訓練になった」
「たしかに長い人生というやつは、それが長く思われるためにはたくさんの不愉快な条件に満たされていることが必要なのかもしれない。だがそうだとすると、だれがそんな人生を求めるかね」……「だってほかになにがある」。
キャッチ=22とは本書を象徴する規則である。
自分が狂人であると願い出たものを飛行勤務免除にできるダニーカ医師は言う、「キャッチ=22だ。戦闘任務を免れようと欲する者はすべて真の狂人にはあらず」。キャッチとは「落し穴」のことだ。
「キャスカート大佐は勇敢な軍人であったから、どんな目標でも躊躇なくみずから志願して部下に爆撃させた」。
時間構成は、語り手の漫然とした回想のようなものだ。出てきた人物に関して、思いつきのようにエピソードがはじまる。
――「おまえが新しい大隊長だ」とキャスカート大佐は掘割ごしにどなったのだ。「だが、それになにか意味があると思うなよ。意味なんかありはせんのだ。意味といえば、おまえが新任大隊長だということだけだ」。
「……キャスカート大佐も民主主義精神に満ち溢れていた。彼はすべての人間は平等につくられていると信じており、したがって連隊本部以外のあらゆる人間を平等な熱情をもっていじめつけた」。
出撃逃れのためにヨッサリアンが入院すると、全身包帯で覆われた、微動だにしない患者が同室に運ばれた。
「だれもなかにいねえんじゃねえか」、「いたずらのために包帯の包みだけを送ってよこしたんじゃねえかな」。「なぜそのふたつの壜をつないで、まんなかの人間を除外できないんだ」。
――「ああ、神さまはわれわれに痛みを与えるなんて、まったく慈愛に富んだことをしてくださったものさ! われわれへの警告ならなぜドア・ベルを使えなかったんだろう、さもなきゃ天上なる彼の聖歌隊のひとつを。あるいは各人の額のまんなかに青と赤のネオン管をつけるわけにはいかなかったのかねえ。少し腕のいいジュークボックス製造業者なら、だれだってそのくらいのことはできただろうよ。なぜ神さまにはできなかったのかね」。
「でもわたしが信じていない神さまは、立派な神さまよ、正義の神さまよ、慈愛の神さまよ。あなたがでっちあげようとしているような、卑しくてまぬけな神さまじゃないわ」。
組織のなかには強弱関係があるが、組織の人間はみな平等に組織の強迫観念にかられることになる。
ヨッサリアンはなんとか出撃を回避して帰国しようと奮闘する。
――「……軍は頭の狂った人間を戦死させるために送り出すようなことはしない、そうだろ」「ほかにどんな人間が出かけていくかね」
――「もちろんあなたの脚じゃありません!」とクレイマー看護婦はやり返した。「その脚は合衆国政府のものです。歯車やおまるとちっとも変わりはありません。軍はあなたを一人前の航空操縦士に仕立てるためにたいへんなお金をつぎこんできました。だからあなたは軍医殿の命令にそむく権利はないのです」。
39章「永遠の都」では核心的なことが多く書かれている。
――これは人間の世界なのだ。……あらゆる犠牲者が犯罪者であり、あらゆる犯罪者が犠牲者である。
キャッチ=22はキャッチ=22に基づく行動を妨げるいかなる権利も認めない。また、キャッチ=22についていかなる情報を提供する義務も認めない。
「おまえはおれたちの味方かおれたちの敵か、どっちかひとつだ。ふたつの道はないのだ」。
「おれは仰ぎ見ると、もうけている連中だけが目に映るんだ。おれには天国も、聖徒も、天使も見えない。見えるのはただ、あらゆる正常な衝動やあらゆる人間的悲劇を喰いものにしてもうけている連中だけなのだ」。