マホメットとユダヤ教とのたたかいに焦点をあてて彼の人生を考える。コーランの大半はユダヤ教にたいする反駁にあてられている。マホメットもユダヤ教徒を兄弟とみなしており、イスラームにとってユダヤ教は、むしろキリスト教よりも近いのである。
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マホメットは、はじめこそ勢力を広げるためにユダヤ教徒を同胞としていたが、やがて彼らとの対立が露呈したため敵対するようになる。メッカやメディナを争って、ついにはユダヤ人とたたかうことになる。
この時代の宗教とはすなわち民族であり国家だった。
――このころの宗教は、現在われわれが考えるような宗教ではない。……宗教が政治、国家を支える指導理念であり、政党綱領の精神でもあった。