うちゅうてきなとりで

The Cosmological Fort 無職戦闘員による本メモ、創作、外国語の勉強その他

『The ministry of fear』Graham Greene

 『権力と栄光』(挫折)、『第三の男』、『内なる私』、"human factor"につづくグリーンの本で、今回は戦時中、爆撃にさらされているロンドンが舞台である。

 主人公ロウは、偶然おとずれた慈善バザールでのささいなもめごとから、なぞの男に命を狙われる。こちらはグリーンの娯楽作品に属するためか、展開も早く、文も読みやすい。

 離婚や浮気調査専門の探偵レニットや、慈善団体に所属しているオーストリア移民ヒルフェ姉妹とともに、ケーキに隠されたなぞを暴こうと試みる。その過程で殺人がおこり、ロウに嫌疑がかけられ、彼は逃走する。しかし、ドイツ空軍の爆撃下では、単なる殺人はほとんどなんの意味ももたないのだった。

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 妻を尊厳死させた前科をもつロウが、ナチスの陰謀に偶然巻き込まれて病院に監禁されるまでの物語と、記憶を失ったロウが自ら取り戻すまでの、二つの物語からなる。

 もっとも親しげな味方をまず疑うべきである。

 

The Ministry of Fear: An Entertainment (Penguin Classics)

The Ministry of Fear: An Entertainment (Penguin Classics)