うちゅうてきなとりで

The Cosmological Fort 無職戦闘員による本メモ、創作、外国語の勉強その他

空の肉(2011)

黒いえんとつから電波が出てきてから
わたしは神さまがよだれを垂らす
ように給与明細を吐き出すのを、しばしば
目にするようになった


明細のなかに掘りこまれた 罫線と
アラビア数字は、べとべとの紙から浮き上がって
眼球にはりついて 二度と動かなかった
横暴が目にあまる

 

四角い筐体を口にくわえこむと 上のあごと
下のあごが 星よりも遠く離れて、すごいとおもった
作動ランプが点灯したので、 赤い絹をまとった
髪の長いわたしの子供のすがたが 配電盤をあけて
愛おしい、小さな指と白い爪でネジをはずし
端末をつなげた

 
うたたねをしたくなる
神さまは
おお まだおなかのふくらんだ セム系の顔面を
そなえた子供 男の子
手のひらには灰の塔が立ち、
神さまにわたしたちは夢中だ
電波は微弱になり
脳みそと指の筋肉はへだたっていく 動かなくなった
茶色の肉のかたまり やさしい連接装置の
肌色のぬるま湯のなかで眠る 最初のあくび