組織液と、すきとおった雨を、紙に
ひたした、そういうかたちをしたものが
その日の夕方にドアの前に立っている、いや、
軸を、高温のうちにねじりこんだガラスの
のぞき穴に瞳孔を近づけてみると
かたちと、甘ったるい香りは点滅する
ようにつぎからつぎへと変形した
赤と、黄色をかきまぜた壁と、レンガのひとつひとつの
くぼみ、陰のなかに浮かんでそびえたつ
複数の線をもった塔、
たえずプロップエンジンの回転音をたてている、
どす黒い、ワイヤーの束が鮮やかな
なにもない夕陽のなかからにじみ出てくる、わたしは
秋がもうきたことを確認する、姉も、
弟もいない通信塔のふもとで、
暗がりにひそむ石膏の群が、それぞれの
家と墓にもどっていく、きょうも
ひとつの変化がおこった
3人でひとつの日付と、ひとつの
棲息地をもつ、とほうもなく、細く
伸びきった顔面の、テレタイプの音にともなって
わたしたちの睡眠の正体を世界測地系で
打ち出していく