著者とロシア兵と、現地人のデルスウは、ロシアの沿海州、ウラジオストクの北方を探検する。針葉樹林の山が未開拓のままのこされており、つねに雨と霧にみまわれ、虎や猪、ノロといわれるけものが棲息している。
「カピタン」アルセーニエフたちは、けわしい道のりを、野営しながらすすんでいく。雨と台風、霧の印象が強くのこった。原住民はたえず中国人におびやかされていた。中国人はおそらく満州人であり、原住民の集落にやってきては略奪したり、作物や家畜を奪ったりする。集落に住まないものたちは猟で生計をたてている。
本のおわりに、デルスウは視力を失い、獲物を射撃することができなくなる。かれはショックをうけて、魂のぬけたようになる。アルセーニエフはかれをあわれにおもって、町につれていくが、不自由な生活に適応することができなかった。町ではあらゆる自由を拘束されてしまう。デルスウは山林のなかにもどり、ロシア人のどろぼうに殺される。
川や森のようす、鳥やどうぶつ、虫のうごきがこまかくかかれており、沿海州の風景に心をひかれた。