日記、講演記録、量子力学についてのエッセイ等がおさめられている。
日記のなかで、朝永は自分の感情とつねにたたかっている。人がねたましい、自分が屑にみえる、まわりの人たちを、なんの目標もない市民とおもいながらも、そういう風に見下すのはまちがっていると考え直す。自分だけが置いていかれる、能力のなさにあきれる、等々。
日記が書かれたのは戦前だが、そのときに一般的だった愛国精神はどこにもないようだ。自分と格闘するので精いっぱいの人間はいつも時代の風潮から置きざりにされている。
収録されたどの話を読んでも、大言壮語がないのでそこに魅力がある。
量子力学は量子という小さなもののうごきを研究する学問で、この小さなもの、素粒子、量子は、ふつうの物体とまったくちがう、奇妙なうごきをする。物理法則からかけはなれているように感じるが、わたしたちの通常生活している場所の物理法則とは異なる法則にもとづいて動いているのだから当然である。
具体的な数式をだされるとまったくわからなかった。あたらしい学問は、多くの学者たちが徐々に試行錯誤して発展していくことがわかった。