概要
アルセーニエフらは、アムール河下流域、シホテ・アリニ山脈の地理学的踏査に出発する。目的は「移住政策の観点から計画されている鉄道の敷設地域が妥当であるかどうか」の検討だった。
探検隊はソヴェツカヤ・ガワニ(港)からアムール河までの1873キロメートルを106日間かけて踏破した。
移動には徒歩とボートが用いられた。
気候風土の説明……
行く先々で必ず地理状況の説明が挿入される。また、洪水、大雨、雷雨といった気象も具体的に表現される。
植生の記録と動物との遭遇は本書の大きな部分を占める。
怖ろしい人喰いトラの話や、狩りの話が思い出される。アムール河下流域は、表面的には静かな印象だが、多くの現地人が動物に食い殺されたり、狩りでけがをして死んだりしている。
装備や食糧の取扱等、探検の中核をなす部分は詳細に書かれている。
――学術用機器は、写真機やストップ・ウォッチ、シマリカリダー式羅針盤、測量データ記入帳、調査日誌、植物標本用ファイル……などである。
――野営用装備は次のようなものである。蚊帳、防水テント、アルミの蓋付き鍋3個、敷布として鹿皮、斧3丁など。
探検隊は動物や敵に対処するために銃火器も準備している。
探検隊の説明
ロシア人の他に、「オロチ」と呼ばれる満洲人が多くいる。ほか、現地の少数民族たち。現地人たちは地理に明るいが迷信深い。
著者は過去の探検の記憶をよく思い出す。
木製ボートによる遡行、登山、野営をしつつ、森と山と河を淡々と越えていく。