うちゅうてきなとりで

The Cosmological Fort 無職戦闘員による本メモ、創作、外国語の勉強その他

安永4年の戦略爆撃

 ◆花火

 きょうは独立記念日ということで、無職戦闘員の近所でも打ち上げ花火が開催されていた。

 バルコニーには、星条旗を頭にさしたハタ坊風の人たちがたくさん詰めかけていた。

 iPhoneで花火を撮ってみたが画質が非常に悪い。

 

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 ◆トランプのスピーチ

 トランプは就任以来、フランス風の軍事パレードをやりたいといって周囲の高官らを困らせてきた。

 大日本帝国にも劣らない軍国主義アメリカだが、興味深いのは、軍事パレードに対しては一貫して懐疑的だったことである。

 かれらによれば、首都で実施されるような大規模軍事パレードは、北朝鮮社会主義国のような権威主義体制を想起させるものだという。

 

 ハワイでも、真珠湾攻撃の日などに記念パレードが行われる。しかし主役はオープンカーに乗った退役軍人や地元の高校生であり、現役軍人はパレードの中盤に出てきて、リラックスした様子で歩くだけである。

 ドイツ国防軍のグースステップや、北朝鮮のような統制の美は皆無である。

 

 なお、米軍では昇任するために様々な奉仕活動への参加が必要である。このため、ゴミ拾いからホームレス用寄付用品集め、パレード参加まで、常に参加依頼メールが流れてくるという。

 祝日のパレード参加もこうしたボランティア活動の一環である。

 以前流れてきたボランティア募集メールでは、「ハワイの美しい海岸をゴミから守りたい軍人、また勤務評定の空欄を埋めたい者はぜひ参加しよう」と露骨に書いてあったので笑った。

 知り合いの軍曹が、とある司令部の下士官先任を見かけたとき、「あの人はいったいどれだけのボランティアに参加したのかな」と笑っていた。

 

 

 今年の独立記念日は、首都近辺で軍を動員し様々なパフォーマンスが行われた。

 ツイッターを見ていたら、トランプ大統領の演説が話題になっていた。

 

 

 ――「アメリカ陸軍は独立戦争時、要塞を打ち破り”空港を奪取した”」

 

 ――「この65年間、敵の空軍はただ1人の米軍人も殺せなかった。空はわたしたちのものだったからだ」

 

www.theguardian.com

 

www.huffpost.com

 

 このような単純な事実誤認がもはや普通のことになり、指摘する方が逆に大人げないように聞こえてしまうのがアメリカ大統領の実態である。

 

 

 ◆シリア、イラン付近

 最近、ISISの起源をテーマにした『Black Flags』を読み終わった。

 

Black Flags: The Rise of ISIS

Black Flags: The Rise of ISIS

 

 

 引き続き、シリアとイランの歴史についても調べたいと思い、次の本を読むことにした。

 

The Morning They Came for Us: Dispatches from Syria

The Morning They Came for Us: Dispatches from Syria

 
We Crossed a Bridge and It Trembled: Voices from Syria

We Crossed a Bridge and It Trembled: Voices from Syria

 
Revolutionary Iran: A History of the Islamic Republic (English Edition)

Revolutionary Iran: A History of the Islamic Republic (English Edition)

 

 

 はるか昔、学校でアラビア語の授業をとったが、まったく身につかなかった。面白い授業だったが、自分で勉強し、継続しなかったのが原因である。

 授業を担当していた女性教授が「シリアは中東のなかでもとても平和で治安のいいところだが、それは外国人にとってだけです」と、ぼそっとつぶやいたのを今でも覚えている。

 おそらく昔日のシリアの平和は、ソ連が文化人を招待し披露した理想郷と同じ類のものだったのだろう。醜い拷問や処刑は人目につかないところで行われるから、我々のような部外者には、住民の憎悪や反感が察知しにくいのだろう。

 

 

 ◆人さらいと「共産スマイル」

www.youtube.com

 

 うすら寒い動画が出現し、元職を中心に文句で盛り上がっている。

 カンボジアの虐殺収容所博物館を訪問したとき、クメール・ルージュ時代のプロパガンダ写真が展示されていた。上の動画を見て、ポル・ポトを賞賛する子供たちの満面の笑顔を連想した。

 

 

 新兵の募集を担当する地方の本部は主に陸軍が牛耳っており、配属されたわたしの知り合いは毎日陸軍に嫌がらせされて、ほとんど対象年齢のいない地区での勧誘ばかりさせられた。

 リクルート活動中は、仕事中に休憩できないようにオリーブ色のジープを運転させられたという。一方、羽振りのいい陸軍の人たちは目立たない乗用車に乗ってよく食事やコーヒー休憩をとっていた。

 

 リクルーターは新兵を送りこめないと原隊に帰らされるのでなりふり構わず嘘をつく。

 柔道の選手になれる、音楽隊要員になれるとだまされて入ってきた若者を何人も見てきた。

 

 程度としては、ネットで話題になるようなブラック企業や、ホスト等の水商売、暴力団よりは労働環境はいいかもしれない。本当に運が良ければよい職場・人間に恵まれるかもしれない。

 暴力団と違って、今は、暴力行為(殴る、キングファイルやバインダーを投げつける、格闘で意図的に骨折させる等)は、運が良ければもみ消されずに処罰してくれることもある。

 

 当該組織は、人が集まらず大変な様子である。そもそも子供の数が減っているから当然のことともいえるが……。

 

 組織の欠陥や予算不足を補うために、独身者や若者は残業や休日出勤で滅私奉公することになる。管理職や組織の職務怠慢のために人生を犠牲にするのが正しい愛国心の発露である。

 わたしの兵隊人生の最後のほうでは、18歳か19歳の新人が毎晩11時まで残業させられているのを見ていた(私は無職になる手続きをしていた)。さらに、その若者は会計・給与計算担当だったので皆から馬鹿にされていた。

 歴戦の船乗りを名乗る少佐級の人物は、自分がいままで何人の部下を精神疾患にしてきたかを自慢していた。

 

 当該動画に騙されて入る人がいるかは知らないが、かえって失望したアンチを増やすことになるのではないだろうか。

 Youtubeのコメントでも、珍しく愛国烈士の信仰告白が見られず、批判が大部分なのが興味深い。

 

給水塔を見て

 丘を、ざくざくと

 面を切り分け、建った

 隊舎、また隊舎のむこうに

 塔が

 

 緑の丘の奥から

 監視する

 わたしの脊椎標本を。

 

 監視をし、わたしをよぶ。

 記録を

 塔は捕捉する、わたしを

 識別し、わたしの皮フ、頭部、

 からだに矩形波を、

 ふぐ毒パルスを

 打ち付け

 わたしに

 ルビを振る。

 

 そして、古い時代の

 飲み水

 塔を、

 青空と、雲のまぶた

 

 継ぎ目に

 葉と水滴が

 うめこまれ、太陽の、

 膿を採取する。

 

 塔を見る

 そのとき、丘に、赤黒い顔がある。

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トランプとともに見よ、ソニーのテレビ

 ◆トランプ、日米同盟への不満を再表明

 日本政府が事実無根と否定していた「トランプが日米同盟に不満をもっている」疑惑だが、FOXニュースでのインタビューで本人が直接不満を口にしたことで事実が確定したようである。

 

 トランプ氏は26日、FOXビジネス・ネットワークのインタビューで「日本が攻撃されれば、米国は第三次世界大戦に参戦し、米国民の命を懸けて日本を守る。いかなる犠牲を払ってもわれわれは戦う」とした上で、「だが米国が攻撃されても、日本にはわれわれを助ける必要がない。ソニー製のテレビで見るだけだ」と述べた。

ブルームバーグ https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2019-06-26/PTPLCQ6K50XU01

 

 躍起になって否定する意味があったのか不明だが、トランプは大統領選の時から同じ主張を続けており、またボブ・ウッドワードのノンフィクション『FEAR』では、日本だけでなく韓国、NATOに対しても同じように不平をこぼしている。

 

Fear: Trump in the White House

Fear: Trump in the White House

 

 

 同書では、一連の同盟国への不満に対し、マティス元国防長官、軍、役人が必死に説得する様が描かれている。

 

・トランプのNATO攻撃:アメリカがなぜNATOに金を払うのか、と文句を訴えたがマティスやダンフォード統合参謀本部議長に必要性を説得された。トランプは、加盟国のほとんどが目標額を支出していないことを非難し、「アメリカの納税者に対し不公平である」と言った。

・KORUS(U.S.-Korea Free Trade Agreement, KORUS FTA(米韓FTA))破棄の危機……不安定で支離滅裂なトランプは、この協定を破棄したがっていた。しかし、韓国との関係を毀損することは、北朝鮮ミサイルに関する情報探知能力を著しく低下させることにつながるため、コーン大統領補佐官マティス国防長官はこれを阻止するか、トランプが忘れるまで引き延ばそうと苦労した。

・韓国のTHAADは、土地は無償貸与だが建設費は米国が負担している。トランプは文句を言ったが、マクマスターらは、サードは米国の役に立つため運用も在韓米軍が行うのだと説得した。

 

 

 ◆予算・人員不足の米軍

 2018年12月に辞任したマティス国防長官の公開書簡は、「大統領はもっと同盟国を尊重するべき」というものだった。

 

 インド太平洋軍は同盟国との協力に非常に積極的であり、ミサイル防衛や基地・施設確保等の点で他国の支援が不可欠だと考えている。

 これは主に予算と能力が軍の戦略に追いついていないためと思料する。

 

 

 ◆アメリカ本土防衛レーダー建設計画

 米軍は現在ハワイにも本土防衛用BMDレーダー「HDR-H」(Homeland Defense Radar - Hawaii)建設を計画している。

 これは、米会計年度2019に建設地が決定される「HDR-P」(Homeland Defense Radar - Pacific)と対をなすものである。

 

 「HDR-P」は太平洋のどこかに建設されるということだが、それが日本ではないかという報道もある。

 

 ジャパンタイムズの記事では、情報源は国防総省の担当者ということである。

 もう1件は香港の英字新聞サウス・チャイナ・モーニングポストで、取材源は読売新聞である。

 記事では2019年1月頃にアメリカ政府から日本政府に対して、HDR-Pの建設が日本において可能かどうか打診したというものである。

 


www.yomiuri.co.jp

 

 イージス・アショア、2つの本土防衛レーダー、アラスカの長距離探知レーダー(Long Range Discrimination Radar, LRDR, イージス・アショアはこれの簡略版)と、大量の兵器契約を結んだロッキード・マーティンは、笑いが止まらないだろう。

www.c4isrnet.com

 

 

 ◆自由で開かれたインド太平洋の財布

 冒頭のトランプ発言は、新たな兵器売りつけの布石ではないかという報道もある。それがでまかせに聞こえないのが情けないところだ。

 前述のアメリカ本土防衛レーダーには宇宙ゴミや衛星を監視する機能もあり、同盟国間での情報共有が予定されている。

 空の〇〇隊は宇宙監視を始めるらしいが、その用に供するという理由で、当該レーダー費用も払わされることになったら笑える。

 

 

 ◆同床異夢

 アメリカは自国の利益とそれ以外を峻別している。一連のミサイル防衛の仮想敵国は中国であり、アメリカ本土防衛が第一目的である。韓国や日本、NATOに設置される設備は斥候か歩哨所のような役割である。

 いざというときに優先されるのはアメリカの都合である。

 

nationalinterest.org


nationalinterest.org

 

 上の記事は太平洋空軍の最近の戦略(Agile Combat Employment、通称ACE)に関する話題だが、要点は、太平洋地域の同盟国とその拠点を活用し、中国のミサイル脅威に対抗するというものである。

 固定された基地に対して、弾道ミサイルの危機がせまった場合、米軍は、同盟軍とその小規模基地・拠点を使い、小規模航空部隊に分散し、太平洋地域を飛び石のように迅速に動きながら戦っていくことになる。

 多国間演習や、海外での共同演習が行われるのはそのためである。

 太平洋空軍のコンセプトではあるが、米軍は統合軍単位で動くためこのコンセプトは全軍種も共有していると思われる。

 

 在日米軍基地がミサイルの標的になった場合、米軍は当該コンセプトに基づいてさっさとオーストラリアかオセアニア地域に後退するだろう。

 日米が「完全に一致」というのは、おめでたい頭をしているか、信仰告白でしかない。

 

 

 ◆用心

 

 ”同盟国とともに戦う以上に最悪なことが1つだけある。それは同盟国なしに戦うことだ”――ウィンストン・チャーチル

 

winstonchurchill.org

 

非政治的マスナヴィー

 ◆USSマケインを隠せ

 合衆国国防長官シャナハンは2019年6月11日付で全国防総省職員に向けた覚書を発簡した。

 内容は、軍人、文官を含む全職員に対し、法律及び国防総省指示に従い、軍の非政治性を維持するよう注意喚起したものである。

 

 具体的には、規則に定められている市民としての権利を行使する以外の、特定の候補者、政党等に肩入れするような政治活動をしないこと、組織として政治抗争に加わらないことを呼びかけている。

 

 こうした指示が出された理由は、先月トランプ大統領横須賀基地を訪問したときに発生した「マケイン隠し」事件にある。

 


 故マケイン上院議員は、トランプ大統領と長年ツイッター等で論争(悪口合戦?)を続けてきた。これを受けて、ホワイトハウスの担当者が海軍に対し、横須賀に停泊している「USSマケイン(駆逐艦)」を視界から隠せと命じた、というのがその内容である。

 USSマケインは2017年にタンカーと衝突事故を起こし乗組員10名が死亡、第7艦隊司令官が更迭されている。何かと話題になる船である。

 

 今回、トランプのホワイトハウスが持ち込んだ政治性は何とも幼稚であり、古今東西の独裁者・バカ殿に通じるものがある。

 記事によるとこの指示は担当者の「忖度」ということだが、そうであれば部下を指揮する能力がないだけである。トランプは「かれは善意でやった」と擁護したらしいが。

 

 

 ◆アメリカ軍人・職員の政治参加

 シャナハン国防長官の覚書において参照されている国防総省指示では、職員の政治参加に関する規則を定めている。

https://www.esd.whs.mil/Portals/54/Documents/DD/issuances/dodd/134410p.pdf

 

 軍人に対しては、政治参加という市民としての責務を遂行することが奨励されているが、党派的政治活動(Partisan Political Activity)には関与してはならないとしている。

 

 

 やっていいこと:

 現役軍人は、選挙登録、投票、個人としての政治的意見表明ができる。

 役職や権威を用いない限りで、他人に投票を呼びかけることができる。

 制限を守り、制服を着用しない限りで、政治団体に所属し会合に参加できる。

 国防長官の承認を受け、また本来任務に影響しない限りで、政党に与しない選挙職員として勤務することができる。

 個人として請願に署名することができる。

 個人として、また投票の呼びかけでない限り、自らの政治思想や意見を新聞紙等に表明可能である。意見が現役軍人のものであると明らかな場合、国防総省の総意ではなく個人の見解であることを明記する。

 細則の許す範囲で政治献金が可能である。

 自分の車の「バンパー」に政治ステッカー(MAKE AMERICA GREAT AGAINなど)を貼付できる。

 個人の「聴衆」として献金パーティーや政治集会に参加可能である。

 

 ダメなこと:

 党派的政治活動に参加すること全般が禁止されている。

 職場で党派的政治活動や投票呼びかけを行ってはならない。

 自分の車に巨大な政治ステッカーを貼付してはいけない。

 自分の官舎に党派的ポスターなどを掲示してはいけない。

 

 (略)

 

 

 その他、軍人の公職勤務や立候補に関する規制が書かれている。

 現役軍人がホワイトハウスの補佐官やアシスタントになる例は割と多い。

 

 軍人の政治活動に係る権利をざっと読んでみると、かなり広範な政治活動を許されているように感じる。

 特定の政党を支援することはできないが、私服であれば聴衆として集会にも出られ、またメディアへの意見表明も許されている。

 車のステッカーの細かい規定などはどう判定していくのかが興味深い。

 

 

 ◆夢の中の兵隊

 私は次のような夢を見た。

 わが国の〇〇隊には、建前上、ここまでの自由はない。基本的に〇〇隊の者が許されているのは選挙での投票のみである。

 わたしの脳内経験では、エアガン雑誌に実名で投稿した作業員が隊長に怒られていた。本来、軍に係わる事項のみが事前申請を要すると記憶していたが……。

 論文や文章の投稿自体が異様に厳しくなったのは、航空の某幕僚長が電波論文を書いて以来だと記憶している。

 クビになったこの人物はいまも大人気、多くの幹部が講演会に出向いている。

 

 元来、日本人はアメリカ人ほど政治活動に熱心ではないが、それでも、発言を奪われた作業員たちの政治意識は非常に先鋭である。

 

 外に向かって意見を表明することはできないが、職場では多数が保〇速報やキ〇チ速報、ヤフーニュースを閲覧し、外国人や特定政党の悪口で盛り上がっていた。

 少し前に、野党議員に暴言を吐いた空的幹部が出現しニュースになっていたが(私はこの人物の指示を受けて作業したことがある)、事件を受けてとある将軍は「よくやった」と内輪で発言した。

 

 兵器の整備法を教育する将校が授業で「中国人なんてな、あんなの撃ち殺せばいいんだよ」と言ったのでクラスの皆で笑った。