◆歴史の本
イスラエルが、アメリカ政府の黙認のもと、実質核保有国になった経緯を描く本。 イスラエルでは軍による検閲制度があり、摘発された場合ほぼ確実に入国禁止となるという。 著者のセイモア(シーモア)・ハーシュは、ベトナム戦争におけるソンミ村虐殺事件や…
主にポリスの興亡を中心に歴史をたどる。 アテネやスパルタ、テーベといった都市国家が政治的独立を保っていた期間はそう長くない。 各ポリスは、それぞれ植民都市を従え、同盟諸国から富を吸収し繁栄を誇ったが、社会変動や国内対立によって疲弊し、また外…
5 「持たざる国」の戦争 ドイツ用兵思想の系譜……小モルトケ(普仏戦争で従軍したモルトケの甥)の包囲殲滅戦略と、シュリーフェンの短期決戦主義が、日本陸軍に影響を与えた。 ドイツ帝国軍から学んだ殲滅戦思想は、1928年改訂の『統帥綱領』や続く『戦…
本書の特徴は、日本軍(主に陸軍)が精神主義に傾倒し暴走した原因を第1次世界大戦によるものと分析した点にある。従来の、日露戦争で驕りが生じ、昭和恐慌期に過激化したという定説に異議を唱える。 近代史、軍事史にそこまで詳しくないわたしのような読者…
大本営報道部に開戦直後の数年間在籍していた軍人による著書。 後半は自身の体験談ではなく資料からの抜粋が多くなる。しかし、大本営報道部とマスコミ、国民とのつながりや要素を知ることはできる。 プロパガンダは平時・戦時に関わらず国家政策の重要部分…
サイモン・ヴィーゼンタールは、戦後、ナチ戦犯の逃亡に手を貸した、「オデッサ」のような組織が存在する、と主張したが、著者は懐疑的である。協力的な人びとはいたが、それははっきりとした秘密結社のような形ではなかったとする。 シュタングルらも、あく…
グロボクニクは、苦痛を訴えるシュタングルに対して、家族を連れてこさせたり、ルブリンで休養をとらせたりした。しかし、シュタングルは任務から解放されなかった。 続いてシュタングルはトレブリンカでの建設作業監督を命じられた。ここでも、トレブリンカ…
シュロス・ハルトハイム(Schloss Hartheim)安楽死施設の管理者、ソビボル(Sobibor)、トレブリンカ(Treblinka)絶滅収容所の所長を務めたフランツ・シュタングル(Franz Stangl)とのインタビューをまとめた本。 シュタングルは戦後逃亡し隠れていたが、…
5 エスカレートする作戦 ・1939年、陸軍は山西省において糜爛性ガス(イペリット、ルイサイト)の実験使用を行った。 残存している命令からわかること……中国民間人への被害は努めて減らすという努力義務を科す一方、三国人(欧米人)に対しては絶対に被…
◆所感 日本における毒ガス兵器開発の経緯から実際の使用までを包括的に説明する本。おそらくこれ以上に詳しい日本語の一般書はないのではないか。 毒ガスは第2次大戦時に既に非人道的兵器、国際法違反であるという認識が広まりつつあったが、総力戦のなかで…
16 リヒャルト・ゾルゲ ゾルゲは近代でもっとも優秀なスパイの1人とされる。かれはGRU(赤軍参謀本部情報総局)職員となり主に極東で活躍した。 ・日本がイギリスの手薄な地点、シンガポールなどを攻撃することを予想 ・ドイツ大使館にドイツ人として…
9 アゼフの失脚 オフラナは莫大な資金をつぎ込み対ドイツ諜報活動を行い一定の成果をあげた。しかし同時に、多くの革命主義者がオフラナにまんまと浸透してしまった。 ――とくにボリシェヴィキなどは独自の対情報工作組織を作り上げただけでなく、革命が成功…
イヴァン雷帝時代から現代までの、ロシア秘密警察の歴史を通観する。 特に、モンゴル統治時代の秘密警察システムがその後のロシアに大きく影響したことが示される。 本書はソ連崩壊直前に出版された。 ◆メモ スパイ活動や組織制度について非常に細かく書かれ…
海軍・陸軍・米軍、それぞれの本土決戦の実情を浮き彫りにする。 戦争指導者たちは、不可能とわかっていながら形ばかりの準備を進めていた。 *** 沖縄陥落前には、米軍を迎え撃とうにも、未然阻止する策がなかった。 ・本土決戦作戦:「決号作戦」の基本は、…
南部藩において、領内で畑を泥棒する者が次々とらえられ、カマスをかぶせられて川に流された。 明治・昭和の飢饉……明治2年の飢饉では外国米を輸入した。このときもたらされた南京袋はその後さまざまな用途に用いられた。 農民は、高値の国産米は売り、自分…
古代から近代までの、歴史の奥に埋もれた貧しい人びとの生活を描く。 ――これは流砂のごとく日本の最底辺にうずもれた人びとの物語である。自然の奇蹟に見放され、体制の幸福にあずかることを知らぬ民衆の生活の記録であり、異常な速度と巨大な社会機構のかも…
2 2004.4~12 大統領選が終わった後も、野党や反対派の動きは見られなかった。かれらはすべてをあきらめているように見えた。 イングーシ、チェチェンでは、それぞれ国家元首がクレムリンの傀儡に置き換えられた(イングーシ共和国のジャジコフ、チ…
著者は2006年10月に何者かに射殺された。 ◆所見 プーチンの2004年大統領選から2005年8月までのロシア情勢を記録した本。生まれかけた民主主義が消え、不正と暴力、無気力に社会が包まれる様子を描く。 人びとの一部は不満を感じているが、自…
歴史上、もっとも有名な法の1つである徳政令を中心に、中世の法と慣習を考える本。 現代とはかけ離れた法の概念や、運用方法を知ることができる。 ◆所感 ・中世から、不動産トラブル、債権債務のトラブルは社会のなかで大きなウェイトを占めていた。 ・中央…
4 叛乱はカポ、ゾンダーコマンドの一部、そして外部のレジスタンスによって計画された。これはすぐ失敗し、首謀者や逃亡者は処刑された。 あるときポーランド人のレジスタンス女性が送り込まれてきたが、この人物はユダヤ人にあまり良い感情を持っていない…
アウシュヴィッツ=ビルケナウ(Auschwitz-Birkenau)に連行され、収容所内でゾンダーコマンド(Sonderkommando)として勤務し、生き延びた人物の貴重な証言。 ギリシア・サロニカのユダヤ人市街で生まれ、イタリア、次いでドイツに占領されるまで、貧しいが…
◆所感 ボスニア・ヘルツェゴビナ紛争における情報戦を検討する本。 戦争における情報戦(Information Warfare)とは、国際社会の世論への働きかけ、メディアに自分たちの正当性を理解させることを通じて、戦況を有利にするものである(実際には定義はもっと…
◆所感 「天皇の軍隊」である日本軍と、社会・民衆との関わりに焦点を当てた本。 明治維新後に創設された軍は、当初、近代化の歯車として機能した。軍隊が近代社会の要素を確立させ、また近代文化を地方に普及させた。 軍隊は、社会のなかの要素として組み込…
アウシュヴィッツ否定論に対抗するための本。 事実の説明や、否定論や修正主義的言説の経緯が紹介される。 1 アウシュヴィッツ概要 ・1920年に制定されたナチ党綱領には、「ドイツ国民にユダヤ人は含めてはならない」とする規定が既に存在した。 ・19…
6 ディレンマと覇権 イラク戦争を支持したヨーロッパ8ヶ国は、ただ「イエス・サー」と叫んだわけではなく、EUに加盟したいという思惑もあった。 合衆国は地球規模の覇権を保持すべきとの方針を継続してきたが、戦後、欧州やアジア地域の復興によりその影…
4 危険な時代 国際テロリズムの本家たる合衆国の活動を検討する。 1962年10月キューバ危機の見直し……キューバがソ連に支援を求め、ソ連がミサイルを運搬したのは、キューバを合衆国の侵略から防衛するためだった。 合衆国はソ連のふところであるトル…
◆所感 副題は、地球規模覇権へのアメリカの探求。 合衆国の歴史が暴力と独善に彩られている様を、細かい事実や報道を元に浮き彫りにしていく。 要点は、合衆国の掲げる理念――民主主義や自由、人権――といったものがまやかしにすぎず、さらに、その非道行為が…
フランス革命が、フランスの歴史、フランス国民にとって劇薬であったことを伝えるという趣旨の本。 著者は、革命が人間の偉大(理想)と悲惨(現実の殺戮、恐怖政治、戦争)を体現していると考える。 岩波ジュニア新書ということで、子供向けにわかりやすく…
海軍航空隊の要員として硫黄島の戦いに参加した大曲覚(おおまがり・さとる)海軍中尉の回想録。 ◆所感 所在航空部隊である海軍の、さらに下級士官からの視点ということで、末端の雰囲気や状況がよく伝わってくる。 防空壕での日本兵たちの生活は、完全に別…
2 ロシアの現実 ・イングーシ共和国のアウシェフ大統領は、チェチェン難民の受け入れを表明した唯一の隣国だが、連邦政府からにらまれ、強制的に辞任させられた。 後任者は、FSB(連邦保安庁、KGBの後継機関)将官ジャジコフだった。イングーシはただ…